- [著]村上 春樹
- カテゴリ:
- 文庫 (318頁)
- ISBN:
- 4122017955
- 発売元:
- 中央公論社 (1991/04)
- 価格:
- ¥ 620 (税込)
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フィッツジェラルドへのレクイエム
村上春樹さんは小説よりもこのフィッツジェラルドにまつわる評論や訳文の方が
失礼ながらも面白いと思える。
フィッツジェラルドが好きだからではなく、たぶん彼が村上さんの血と肉に
なっているからだと思う。
おとぎ話のような出世から結婚、そして不如意な晩年までを村上氏は追いかける。
その目は不幸な作家に対してただひたすらに南部の陽だまりのように優しく明るい。
この本が書かれたころにフィッツジェラルドの一人娘さんが亡くなった。
彼女の存在は村上さんのフィッツジェラルドの妻ぜルダの伝記
(最初は世界の女性の一生のシリーズの短編だった)を読んでから
気になっていたのだがその消息もこの本に書かれている。
思えば村上さんのおかげで自分もフィッツジェラルドと付き合っているのだ。
誰の言葉だったか「作品よりも自分の私生活を語られる作家は不幸だ」と聞いたが
ここまでの愛情を持って語られるならフィッツジェラルドの
破天荒で不幸な人生も満更ではなかったかもしれない。
本人は墓の下で照れているのか拗ねているか判らないのだが。
フィッツジェラルド・好きになりました!
「グレート・ギャツビー」の感動さめやらずで思わず手にして見たこの本。
スコット・フィッツジェラルドの関連する地を村上春樹が訪れた記録
スコットとゼルダの人生の紹介
スコット・フィッツジェラルドの2つの短編
という構成で本ができている。
村上春樹がいかに、スコットフィッツジェラルドを尊敬してやまないかと言うのが
全編を通して感じられる。
巡礼、ではないけどそれに近いものをやっているしね。
そして、一番魅力的なのが、スコットとゼルダの人生について。
とくにゼルダの描写がとてもうまい!
それほど顔立ちが際立って美人でもないけれど、彼女のヴァイタリティには
磁場のようなものがあって・・・
ととても魅力的に描写している。
個人的にはNYでの馬鹿騒ぎの写真とかエピソードをもっと知りたかったきもする
けど、それは別の本で調べた方がいいんだろうな、と思った。
短編も、情景描写がうまいんだろうな。スコットは。
読んでいると、まるでそこにいてみているような感覚にとらわれてしまう。
とても1920年代に生きていた人とはおもえないくらいに、ありありと。
機会をみつけて他の本もトライして見たいと思う。
やっぱりでも、翻訳小説独特のとっかかりにくさっていうのはあるんだけどね・
あっさりとした重み
紀行と翻訳と人物史を一冊に書きこめる作家というのも村上春樹ぐらいしかいないのかも知れない。読みながら何度もそう思った。
フィッツジェラルドの生涯を辿りながら村上春樹は旅行している。その様は 他のレビュアーの方が「巡礼」と表現されていたが 正しく「巡礼」のようだ。その間にフィッツジェラルドの短編を挿入し フィッツジェラルドの妻の生涯も簡潔に纏めている。各編ともあっさりした味わいながら 湛えた一種の「哀しみ」は通常低音のように響いている。
村上春樹は レイモンドカーバーの翻訳で名高くなったわけだが 実は このフィッツジェラルドから翻訳を始めていたということは案外知られていないかもしれない。「マイロストシティー」という綺麗な翻訳短編集を読んでいると 村上がフィッツジェラルドの持つ「哀しみ」に いかに共鳴していたかを強く感じる。
その上で 本書で じっくりフィッツジェラルドを辿っていく村上の姿には極めて誠実なものを感じる。そう 村上春樹は 非常に誠実な作家なのだと思う。
各編はあっさりしていながら 読み終わると ずしりと重い。その重みは 村上のフィッツジェラルドへの思いの 重さなのだろうか?
S.フィッツジェラルドをめぐる旅
もうすでに亡くなった作家の影を追うことは、
なんだか切ないと感じました。
本書を読むことで、S.フィッツジェラルドという人物をあらかた知ることができます。
また、妻であるゼルダについても、知ることができます。
村上さんが訳した2つの短編もついています。
私は、これから村上さん訳の「グレート・ギャッツビー」を読みますが、
事前にS.フィッツジェラルドのことが知れてよかったと思いました。
スコット・フィッチジェラルド研究の集大成と短編二つの翻訳
1991年の初めから、約2年半にわたって氏はアメリカ、ニュージャージー州プリンストンに住んでいる。この地を選択したのはF・スコット・フィッチジェラルドのためであることは村上氏の小説好きならピンとくるところである(この時の様子を綴ったエッセイが『やがて哀しき外国語』だ)。
本書は氏のまもなくスコット・フィッチジェラルドの没年(44才)にならんとする年までのスコット・フィツチジェラルド研究の集大成と短編二つの翻訳からなっている。こつこつと積み重ねられた文章は最高のスコット・フィッチジェラルド研究になっている。さすがは最後はその地に住んでまでやり遂げたことはある。
これからも、ゆっくりとゆっくりとスコット・フィッチジェラルドの著作を訳して行きたいと氏は語っている。60才までには『グレイト・ギャッビー』を訳してくれるようだ。
僕は『グレイト・ギャッビー』だけでなく是非とも氏の訳した『夜はやさし』を読んでみたいなぁ、と願う氏のファンの一人だ(●^o^●)。
非の打ち所なし
~ 「リッチ・ボーイ(金持ちの青年)」、全く素晴らしい短編です。非の打ち所がないというのはこういうことをいうのでしょう。専門家から見たらあるいはここはちょっとなあという部分もあるのかもしれませんが、僕にとってはそんなところ見つけようと思っても無理な話でした。まず冒頭からしてイイですね。余談ですが訳者の村上春樹さんはここのところを自著~~の「スプートニクの恋人」でちょっと真似て書いています。というかこれを読んで「そういえばスプートニクに同じような箇所があったな」と思いました。文学的パロディ、あるいは一種のオマージュですね。「グレート・ギャッツビー」と同じような方法で書かれているのも特色の一つです。これは間違っているかもしれませんが、「ギャッツビー」の直前かすぐあと~~に書かれたものであるような気がします。
春樹さんのエッセイもどのフィッツジェラルドの伝記よりも読み応えのあるものです。おそらく彼がどれほどフィッツジェラルドの作品に心酔しているかということが、読むものにとって邪魔にならない形で嫌みなく提示されているからではないでしょうか。
~~
僕は思うのだけれど、誰かに愛されていないことには彼は幸せにはなれないのだ。
「リッチ・ボーイ」~
スコット・フィッツジェラルドという人となりが、ある程度まとまって分かるようになる
スコット・フィッツジェラルドという人となりが、ある程度まとまって分かるようになる本です。特に良かったのは、フィッツジェラルドの生きたジャズエイジ(1920年前後)の雰囲気がとてもよく分かること、そして奥さんのゼルダのことが詳しく紹介されていること。エッセイ以外に、2つの短編「自立する娘」と「リッチ・ボーイ(金持ちの青年)」の翻訳も掲載されています。特に「リッチ・ボーイ」は印象的で、またしばらくしたら読み返したい短編。
尻つぼみかな
村上さんのフィッツジェラルドに対する思い入れと、フィッツジェラルドの生きた1920年代前後のアメリカの空気や風俗が伝わってくる本です。これだけの雰囲気を伝えるのには、相当資料にあたらなければ、いけなかったでしょうから、著者のこの時代の世相への思い入れには、感服します。ただ、前半部のいきごみは素晴らしいですのが、後半部は、やや息切れしたのか、少し退屈なのが残念ではあります。
フィッツジェラルドに対する村上氏のオマージュ
村上春樹氏は、本当にスコット・フィッツジェラルドが好きなのでしょう。この本には、フィッツジェラルドに関係のあるアメリカの5つの町を訪れた短い紀行文、2バージョンある『夜はやさし』についての考察、スコットの妻ゼルダについて、映画『グレート・ギャツビイ』について、それから氏が訳した短篇2つという内容になっています。相当調べないと、ここまでは書けないのではないか、と思ってしまいます。
特に短篇2つには、村上氏による簡単な鑑賞のポイント紹介のような文章が付いていて、読みやすいです。スコット・フィッツジェラルドの小説を改めて読み直したくなってしまう内容でした。
村上春樹が自身のフィツジェラルドに対する思いをが余すところなく形に
村上春樹が自身のフィツジェラルドに対する思いをが余すところなく形にしたような本。エッセイと短編の翻訳で構成されています。第一部「スコット・フィツジェラルドと五つの町」では、フィッツジェラルドにまつわる場所を訪れて書き綴ったエッセイが5編(それぞれニューヨーク、ハリウッド、ロックヴィル、モントゴメリイ、セント・ポールを探訪)、第二部「スコット・フィツジェラルドについての幾つかの文章」もエッセイ集で、短編「夜はやさし」の2つのバージョンについて、奥さんのゼルダ・フィツジェラルドの伝記、映画「華麗なるギャッツビー」に関するコメントなどが収められています。特にゼルダ・フィツジェラルドの生い立ちに強い印象を感じました(享楽的な生活を送りながらも最後には精神分離症になり、悲劇的に死んでいった)。「ノルウエイの森」のモチーフになった人では?というような感じも受けました。第三部は、2つの短編「自立する娘」と「リッチ・ボーイ(金持ちの青年)」の翻訳が収められています。「リッチ・ボーイ」が良かったですね。最後にスコット・フィツジェラルド年譜まで付いています。
