- [著]森 博嗣
- カテゴリ:
- 文庫 (354頁)
- ISBN:
- 4122047692
- 発売元:
- 中央公論新社 (2006/11)
- 価格:
- ¥ 680 (税込)
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水素の世界観に拍手
空で戦うことにしか生きている実感が持てない。
空に出ることでしか自分が認識できない。
それなのに、最後は地上に戻ってきてしまう。それが地で生まれたものの定めなのか。
水素の持つ空への憧れが、重たいくらいに感じられる一冊でした。
また、ティーチャに対する複雑な感情に関しても、直接的な表現は敢えて避け、それでも読者に分かりやすいように表現してあります。だって、地上では表情が乏しい水素が、彼を目の前に涙するなんて、大変珍しいことでしょう?
また、函南との絡みも気になります。今後の展開がどうなっていくのか、楽しみです。
スピード感(ストーリーの)が心地よかった。
グングン読み進めていけちゃうような、おもしろさではないけれど、好感をもって主人公を追っていけるスピード感がよかったです。まだこの本を読んでいるときは、私もこの本の中で戦いを楽しんでいるようなお気楽さがありました。おもしろいな!!と思いで次の「フリッタ・リンツ・ライフ」へうきうきとした気分で手を伸ばしました。次からだんだんとミステリーです
砂漠の中で行き場を失った旅人のよう。
スカイ・クロラシリーズの第3弾。
今回は草薙水素の戦闘時代が描かれます。
飛ぶことだけを夢見て、飛んでるときだけに『生』を感じる。
敵を落とし、仲間が死に、それでも戦う。なぜなら空に飛ぶことが自由でいることを実感できる空間だから。
スカイ・クロアシリーズで一環して語られている、この感覚。
飛ぶ=自由。
キルドレとして一生大人にならない体を与えられ、死と生のすれすれの空間で戦い続けているにもかかわらず、『死』に対して重く捕らえるところはなく、自由に飛びまわれるために余計な重さをそぎ落とした戦闘機散香のように、文体もただ飛ぶ=自由についてのみ純粋に描かれている。
だからこそ、負傷し翼を失った戦士キルドレ草薙の療養生活は、いかに憂鬱で不自由で、砂漠の中で行き場所を見失った旅人のように空虚感が浮き彫りになってくる。
森 博嗣の文体は、自由な空を飛び回って生き生きしているときこそ、短く、詩のように瞬間瞬間を表現している。
その反面、地上に降り立ち、人間や他の仲間と接する時間は機械のように冷たく、心がないようにも見える。
そんなキルドレだから、普通の恋などしたことがない。だからカンナミに出会うことで、今までにない不思議な気持ちに気づかされたのだろう。
時はスカイ・クロアより以前。草薙を形成する人格のひとつがここでも明かされる。
ちょっと興醒め
『スカイ・クロラ』、『ナ・バ・テア』に続くシリーズ第三弾です。
私はこの作者の小説は、このシリーズと「猫の建築家」(小説?)
ぐらいしか読んでいないのですが、飛行機とキルドレだけの
意味なき世界を描く、ストーリーの透明さに惹かれていました。
個人的には夏目漱石の「草枕」に通底するかのような感じを
楽しんでいました。
そういう意味では、本書は後半、「社会」だとか「マスメディア」
だとか、妙にリアリスティックな、余計な雑音がでてきて、
ちょっと興醒めしました。
続く物語はどんな風に展開するのか、楽しみです。
航空用語に躓きつつ・・・
森博嗣の小説を読むのが初めてでしかも小説自体最近全然読んでなかったのですが途中どきどきしながら読ませていただきました。なぜ何のために生きているのか、一対一の戦いだからどうせなら踊るように楽しもう、などところどころのに操縦士ならではの哲学的な考察や職業的な境地がみられ、考えさせられる場面もありました。
ちなみにエンロンとラダーの併用によって安定した飛行が保てるとのです。少し用語を学習したので戦闘シーンの切迫したスリリングな展開に注目して再読してみるとします。
凄いコストパフォーマンス
文庫版、680円な訳ですが
この内容でこの値段、小説とは素晴らしいものですね。
とりあえず星は5つです。とても味わい深い文章で構成されています。ただ少し難解ですね。
『お米』みたいなもので、甘味が出るまで咀嚼する必要があります。
甘味が落ち着いても噛み続ければさらに深い甘味が来ます。(いわゆる味の向こう側ですね)
だから速読は難しいですね。先が気になって早く読み進めたくなりますが理解が追いつかないので、ページとばして読んじゃっても気づき難いです。
だから時間に余裕が有る時に読んだほうが良いです。きっと読み始めたら最後までいっちゃいますから。
一体感がたまらない
キルドレンシリーズ第三弾。時系列的に言えば『ナ・バ・テア』の後で『スカイ・クロラ』の前になると言うことかな。今回の主人公は前作同様クサナギスイト(草薙水素)
今回も常に生と死というテーマがつきまとう。地上では生きる意味を見いだせない。命の保証がない空では、いつ死ぬかも分からない。死の形を何度も思い描いたり、雲の果てに天国を夢想するあたり、美化された死へのあこがれというのが所々に垣間見える。それがどこか哲学的で、シュールな感じがするのは口調のせいかな。
もう一つのテーマとしては子どもと大人。これもシリーズを通じてだが、大人である甲斐がそばにいるせいか、クサナギの子供じみた感じが目立つような気もする。大人になってから死んでいくしかない。そんな憂鬱を抱えながら。それでも、子どものままでは死ぬことすら出来ないという、葛藤もこめて。無性に生き急いでいる感も漂う本作のクサナギは。今までのシリーズのどの主人公よりも人間的じゃないかと思った。憂鬱、という点では装丁が素晴らしいと言うべきかも。
組織の思惑っていうのは、きっと子どもには余計なものにすぎない。だがそんな風にでもしないと成り立たない社会。いつまでも子どもではいさせてくれない。クサナギの逡巡の日々は、雲の中を漂い続けるような。だからこそ終盤の戦闘シーンで一気に感情が爆発したクサナギを見ることが出来るのだ。この展開の持って行き方は上手いと思った。話としてはというより、クサナギの成長ぶりがうかがえるのはなんとも。そしてそのあとのサプライズも。ずるいんだかなんなんだんだか。
哲学的な要素もクサナギの心理描写にもりこまれているので、それほど分厚くはないがじっくり堪能して欲しい。空をイメージしながら。なんと言っても一体感がたまらないよね、このシリーズは。過去作も再読したくなってきた。年の瀬に、いい物を読めた、と。
詩的な言霊が映像付きで連続発射
オリジナルは2005年6月25日リリース。『スカイ・クロラ』シリーズの第三弾。氏のWEB日記によれば『スカイ・クロラ』シリーズはあと1冊でるらしい。
ここに至るとまるで言葉が弾丸のようだ。詩的な言霊が映像付きで連続発射されている感じ。凄い表現力に感嘆である。読めば読むほど迷宮に入り込み、クサナギ・スイトとカンナミってどういう関係なのだろう、って思っている森ファンがたくさんいるだろう。謎が謎を呼んでるな。(●^o^●)
森作品は、まずキャラクターありきだ。何体かの魅力的な要素を持ったキャラクターを適度に配置、そして当然予想される化学変化を映像化し、それを文章化するという感じがする。その辺がふつうの作家とだいぶ違う。言ってみればそれは、2次元で小説を書くのと3次元で小説を書くのとの違いだ。森博嗣のキャラクターは皆、立ち上がり動き回る。その中でも草薙水素は『純』に光っていてステキだ。(●^o^●)
