- [著]スティーブン ピンカー
- [原著]Steven Pinker
- [翻訳]椋田 直子
- カテゴリ:
- 単行本(ソフトカバー) (312頁)
- ISBN:
- 4140017406
- 発売元:
- 日本放送出版協会 (1995/06)
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一般向けチョムスキー理論
言語を習得し、思考する際には、人類に普遍的な構造が存在する。
こうしたチョムスキーの論を一般向けにわかりやすく書いているのが本書だ。
まず筆者は、「言語が思考を決定する」といった、今日の哲学者にうけるドグマを批判する。
そうしたドグマは、異なる民族を「自分たちとは本質的に異なるんだ」と好奇の目で見たり(イヌイットには雪の語彙が多い、というのは、イヌイット=未開のイメージを強化する)、言語をもたない人を差別したりするだけだ。
言語はせいぜい思考の手助けをするぐらいで、本当に思考をつかさどっているのは人類に普遍的な心的言語である。
言語を使うには、文法をきちんと守れねばならない。
しかし、文法は意味とは別のものだ(『緑色が眠る』のような、ナンセンスだが文法的な文がある)
また、文は、何層にも入れ子式になることができる(いわゆる複文)。
だから、あらかじめ可能な配列を設定しておいて、その中から単語を引っ張り出してならべるという方法では文法は守れない。
そこで登場するのが普遍文法だ。
普遍文法は生まれたときから頭の中に存在している。
そしてそれにのっとることで、母語を速やかに習得していくのだ。
このことは、幼児による実験でも確認されている。
脳が言語をつかさどるのだから、当然言語を作る遺伝子も存在する。
そして、今日のような言語能力は、進化の過程で獲得されたものだ(これはチョムスキーと異なる点である。チョムスキーは言語能力を進化によるものだということを認めたがらない)
本書では、全体にわたってユーモアにあふれた部分も多く、楽しく読み切ることができる。
ただ、これは仕方がないことだが、例文は全部英語なので、訳と解説は付いているものの、やはり日本人の読者にとっては読みづらいところもあるだろう。
チョムスキー理論の入門書としても非常にいい本だろう。
あぁ、お偉方に読ませたい。
こういう考え方が十分紹介されていれば、日本の言語を取り巻く雰囲気がここまで非科学的で陳腐になる事はなかった?
もはやこぎみいい。
95点
日本人が英語を獲得しづらいわけが判った気がします
この巻。とても面白いです。言語に対して人がとった戦略が免疫機構の持つ戦略と共通点ー有限要素の掛け算によってその機能を増幅ーがあると考えたことがなかったので、とても新鮮でした。しかも文法の成り立ちだけでなく、単語、音声パターンの成り立ちにいたるまで同様の機構が適応しうるというのは圧巻です。
本題ではないのですが。。。著者が北米出身であり当然のごとく英語を中心として解説されています。この解説が英語をもう少しまともに話したい人にとっても貴重な知識となりうると思います。例えば、wirte の i と ride の i が違っていて、そこには一貫した法則が隠れているなんて知りませんでした。さらに脱線しますが。。。臨界期以降に英語を始めた日本人がなかなか上達しない理由の一部が少し分かった気がします。いわゆる文法はやっても、これもどう考えても日本語とはかけはなれている単語や音声パターンに関する文法に関してはほとんどやる機会がないのですから。
さすがショーマンシップの国と唸る折伏力
アメリカ人は,どうしてこういう教養書を書かすとこうも巧いのかと感心する。トリビアな雑学を駆使し,時にニヤニヤさせながら,実にセンス良く,「言語と認知」をめぐる問題を概観させてくれる手並みには感心するばかりである。
著者は書中で頻繁にチョムスキーを引用し,言語相対仮説をなで切りにすることからもお分かりの通り,「(程度の差はあれ)言語の語彙や構造が認知を規定する」とするサピア=ウォーフ説には批判的である。人間は教わらずとも言語を駆使する能力があり,語彙や言語カテゴリーの違いは,二次的な要因に過ぎないとの主張を,手を変え品を換えて提示し,読者を知らず知らず「生得説」へと誘う手管は,さすが議論慣れしたアメリカ人。逆にいえば,何の予備知識もなく読めそうでいて,実は意外と読み手の基礎知識も問われる本だ(それなしには簡単に折伏される:笑)。
個人的には,ごく短いスパンで,状況に即応して臨機応変に変化する言葉(個人の操作能力に依存)と,もっと長い時間の中で,個人の価値観やものの把え方の枠組みに影響する,状況や体制としての言語体系(社会や文化に依存)とを,どの程度意識的に区別しているのかという点に,やはり引っかかりが残る。同じ課題は表象と認知の関係を扱う他分野でも問題となるが,やはり2者の区別が充分でないため,生得説と構成説は物別れに終わる。アメリカでは研究費獲得のためもあってか,論者のほうも半ば確信犯的に「演技」している部分があるが,その繰り返しはやはり不毛だ。むしろ「生得的」なのはどの次元で,多様性を帯びるのはどの次元かを分け,個別にその特質を論じるほうが建設的な気がするがどうだろう。面白かった方は参考までに,慶応の今井むつみ女史(2000:心理学研究71)のご一読を薦める。
本能は言語を洗練の方向に収斂させる。
だから、本能のないコンピューターは、人の言葉を上手く解さないのではないか、と思った。(コンピューター恐るるに足りず。)
本書は非常に複雑な内容を含むし、事例として、文法的には正しくてナンセンスな文章が頻回に登場したりするので、英語から日本語へ翻訳をするのが非常に大変だっただろうなあ、と感じる。日本語に訳してくれているので助かる反面、原書では、どう書いてあったんだろう?と確かめてみたくなる箇所もある。
本書を読むと、色々な楽しみ方ができ、発見もあると思う。一見、明らかに、日本人にとっては、不合理と思える英語の発音や綴りに関して、アメリカ人もそう感じているということがわかる。英語の綴りに関しては、音素を表しているとすれば、メチャメチャかもしれないが、形態素を表している、(漢字と同じで意味的な塊でもある)、とすると合理的な規則性に納得できよう。
これを一冊読むと、言語に関して博学になった気分になれます。
現代生成文法の入門書
言語は学習ではなくヒトの本能である。The language instinctの訳本。著者はピンカー女史。訳本だけれど読みやすい。内容は科学的であるにもかかわらず、読みやすく興味ある内容。チョムスキーより言語学では面白いし、わかりやすいかも。でも、上下で二巻はやや高い。
言語はどこから来たのか
人はなぜ言葉を話せるのか?言語能力は進化の過程で獲得された本能で、思考能力や知能とは別物だという。素人としてはまず驚くが、脳のしくみ、母語獲得プロセス、言語の変遷、文法などあらゆる角度から解説されていて、実例が豊富で分かりやすい。しかも著者の語り口はユーモアたっぷりで、人間と言語のたどってきた長い道のりを目の前に見せてもらった気がする。
