- [著]菅 浩江
- カテゴリ:
- 文庫 (453頁)
- ISBN:
- 4150307539
- 発売元:
- 早川書房 (2004/03/09)
- 価格:
- ¥ 798 (税込)
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なんでこれが「推理作家協会賞」?
本書はSF作品であるが、第54回「日本推理作家協会賞」受賞作なので、SF設定のミステリー作品として期待して読んだが、ミステリー作品としては「凡作」で、なんでこの程度のレベルで受賞したのかまったく理解できない。
よっぽどこの年度の候補作が不作揃いだったのだろうが、それなら「受賞該当作品なし」にすればよかったのにと思う。
また「レビュー」の高評価揃いも理解できない。
同賞受賞作品として、つまりミステリー作品の傑作として期待して読んで、ガッカリしたという人は他にいないのだろうか?
私はSF作品については門外漢で、本書をSF作品としてまっとうに評価することはできないが、大して面白いと思わなかったので、素人には理解できない、よっぽどのマニア向けの作品ではないかと思う。
優しく切ないSFラブストーリー
▼STORY
地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大衛星〈アフロディーテ〉。
そこには既知宇宙すべての芸術品が収蔵され、データベース・コンピュータに
神経接続された学芸員たちが日々、美の追究に勤しんでいた。
▼EXPLANATION
「美」という概念を分析し、解明し尽くしたいという欲望と、
「美」に無条件に身を委ね、一体化したいという切望――。
そうした相反する人の想いの狭間に立つ本作の主人公・田代は
毎回苦悩し、途方にくれながらも、「美」の奇蹟とそれをもたらす
人間存在の不思議に魅せられていきます。
浦沢直樹『MASTERキートン』を彷彿とさせる味わい深く、
洗練された人間ドラマがそれぞれの短篇でなされる一方、
連作全体が、作中ほとんど姿を見せない田代の妻の存在を
軸に、切なく美しいラブストーリーとしてまとめ上げられています。
特に、ラストシーンは出色で、SF的仕掛けが田代たちの情動に呼応し、
有機的に連関していく様は、ちょっと他に類を見ない鮮烈な情景となっています。
上手く説明できないけど、とても綺麗ね
既知世界における「見物する」の目的語をジャンルをこえほぼすべて網羅する
遠未来の博物館惑星を舞台に、学芸員・田代孝弘が出会う事件を描いた連作。
人に頼られたらむげにはできない優しく苦労性の主人公・孝弘のてんてこまいっぷりに
笑ったり、「過渡期の技術」の一言で忘れ去られた往年の先輩に対し
「可哀想だって思うことと、哀れに思うことって、違うわよね」
と胸中を吐露するネネに切なくなったり、
データベースと直接接続する学芸員の特権に酔い痴れて
「反省?なんですかそれ?僕エリートだし」
といわんばかりに幼稚なマシューに心底むかついたりと
魅力的かつ個性的なキャラクターにはすんなり感情移入できる。
どこの職場にもある上司や同僚との軋轢や人の話を聞かない困ったちゃんの後輩など
丁寧に描かれる人間関係の機微が固くなりがちな芸術論の緩衝材となり
華々しくアカデミックな会話に絶妙のユーモアを添える。
中でも「ラブ・ソング」は秀逸。
ラストシーンの美しさは圧巻。
芸術を難解に語る言葉をもたない妻が漏らすたった一言の「綺麗ね」を軽んじていたと
主人公が猛省する場面に思わず貰い泣き……
主人公の美は対象物以外を夾雑物として除く狭量な美。
妻・美和子の美は対象物以外のものをも含み全体を成す豊かな美。
だからこそ主人公は美術品の鑑賞中に隣にいる妻を忘れ
美しいものに接した妻は「愛する人とこれを見たい」と望む。
「貴方みたいに上手く説明できないけど、とても綺麗ね」
抱擁する手は包容する心。
美しいものを美しいと素直に感じる心があり、
愛する人が隣にいれば、
世界はきっと美しい。
愛することとは互いに見つめあうことではなく同じ方向を見ることだ。
ラストシーンの二人にその言葉を捧げたい。
タイトルに惹かれて・・・。
『永遠の森』という、タイトルに惹かれて買いました。
芸術や美術に関連した9つの連作短編集で、主人公は学芸員。
ひとつひとつの物語は、独立しているけど、何気なく伏線が張られていて最後の物語に
つながっています。
キーワードは、ベーゼンドルファー・インペリアルグランド、「九十七鍵の黒天使」と
異名をとる1台のピアノ。
最初と真ん中にチラチラとその名前がでてきて、ラストの物語「ラヴ・ソング」で、
きれいにまとめられています。
美術品などを通して、人と人が、ふれあう優しさやせつなさが、描かれていて、読んだ
後に、心地よい気持ちになって、ゆったりします。
そして、美術館や博物館、植物園などに、出かけてみたくなりました。
ただ素直に、「綺麗」を感じるために・・・オススメの1冊です。
マイベストです。
私には小難しい論評はできませんが、本当にお勧めの作品です。
元は星雲賞を取ったSFということで手にした作品ですが、菅さんファンになったきっかけの作品となりました。
女神の名を冠したコンピュータに脳を直接接続する学芸員というSFと芸術のミックスを舞台とし、魅力的な人々との間に織り成される物語・短編集となっています。
なんといっても雰囲気と登場人物が魅力的な作品だと思います。
読みやすい作品でもあると思いますので、是非読んでみていただきたいです。
SFらしいSF作品
SF文学の役割の一つは、現実の一側面を架空の技術という道具立てにより際立たせ、より理解しやすい形で読者に見せることであろう。その意味で、本作品は実にSFらしいSF作品である。データベースを脳に直接接続した学芸員の日常というストーリーを通し、人と芸術とのかかわりについて考えさせられた。私にとっては、芸術論の良い入門書となった。
しかし、本作品の一番の魅力は、そんな小難しいことではなく、ミステリ仕立てのストーリー展開と、優れた文章によって喚起される美しい情景である。短編で構成されてはいるが、それらはすべて最終章へとつながっており、主人公に感情移入することができれば、読者はラストで大きな感動を味わうことができると思う。
こんなすばらしい作品が、日本語でしか読めないなんて、実にもったいない。誰かが英訳し、全世界に紹介してくれることを切に願う。
あたたかな視線
SFというので「きっと難しい言葉とか事件とか?」と身構えて読み出したのでしたが結局はそんなことはなく多分誰にでも楽しめる本ではないかと思われました。主人公の孝弘がお人よしで鈍くって可愛かったです。日記記録に妻について書いた記述が{検索結果ゼロ}と知った時の驚き方と言ったら!もう大笑いでした。反省して欲しい物です。他にもいばりんぼうマシュー、黒猫の様なネネさん、黎明期の学芸員オジャカンガスさんなど魅力的な人物がてんこ盛りです。美を追求する人たちの真剣ででもどこかほほえましいやりとり。短編集ですが基本的には全部ハッピーエンドですし読後感も良いです「あなたみたいに上手な説明は出来ないけど、とにかく、綺麗ね」という妻の美和子の言葉が最強かも?良い本ですよお勧めです。
SFと芸術
学芸員や博物館、展示品そのものなどにSFとしての設定が用意されており、本書がSFであることは間違いないです。しかし根本にあり本書の魅力を支えているのは著者が愛してやまないのであろう「美」や「芸術」、そして人の「心」なのでしょう。作中の学芸員たちが奇跡のような検索機能を持ちながら、多くの悩みや疑問を持つ姿は芸術に接する人の普遍的な姿のように思えます。博物館惑星の設定自体が著者の理想と芸術へ抱く不安や迷いを反映しているように感じました。機械と人と芸術、どれか一つでも興味があるならば読む価値のある本です。
やさしさ
未来の博物館とそこで働く脳をコンピュータで直接接続
した学芸員のお話。
ずっと未来の話ですが、そこにいる人々は私たちと
変わらず戸惑いや不安を抱えていますが優しさにも
あふれていました。人、美術、機械の未来を温かく見つめる
作品だと思います。
芸術と科学の姿
芸術という人間の感性が求められているものと、科学という論理性が要求される、一見すれば相反する二つの要素の中で翻弄される主人公。
「女神」と直結した主人公は、博物館惑星の中でもエリートだが、その立場にとらわれず思考を重ね、人間関係に翻弄され、芸術と科学の狭間で生き続ける。その辺りに深く共感した。
いつか遠い未来、人類は宇宙にこのような天体を作り上げ、その中で人類が生み出してきた数多くの芸術を探求し続けるかもしれない。その気にさせてくれる作品。
私もこのような博物館惑星に、一度は住んでみたいと思う(笑)。
