1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)

  • [著]ジョージ・オーウェル
  • [著]新庄 哲夫
  • [著]George Orwell

カテゴリ:
文庫 (422頁)
ISBN:
4150400083
発売元:
早川書房 (1972/02)
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評価: 4.5
2008
04/06
Sun

彼方

50.0% (2 / 4)
[No.27] posted by ジャッキー・アイドル

1948年の作品。スターリンの独裁社会主義のパロディであり、全体主義の未来社会を描く。オーウェルはスペイン内戦に参加する。ラルフ・フォックスやジョン・コーンフォードは理想に散った。帰還して大戦の行方とボリシェビキのロシアをどの様な想いで見ていたのだろう。この作品の中心人物「オブライエン」はヒトラーやスターリンを上回る狂気を持つ。1907年にジャック・ロンドンは「鉄の踵」を書き資本主義はおろか、おそらく社会主義にも絶望した。私には本作は「鉄の踵」の続編に見える。「オブライエン」は高らかに語る「地球は人類と同じ時に誕生し、太陽と星は地球の周りを回っている。真の権力とは「物質」を支配する事では無い。「人間」を支配する力の事だ。昔の改革者が夢想した愚かしい快楽主義的なユートピアとは正反対だ。神とは権力である」。唯物主義をも嘲笑い、究極の主観的現実認識、それでいて個人を完全否定する絶対支配。これに対して主人公は弱々しく反論する「しかし、人間精神がそれを打ち崩します。わたしの方が道徳的に優れています」と。しかし主人公が何とも小さく見えるではないか。最後には主人公はその頼りの人間性も卑怯で愚かしい自分中心主義である事を悟り敗北する。結局ルソーに回帰する。猿に戻るか権力を認めるかだ。「1985」でアントニイ・バージェスはアナーキスト風に本作とはパラレルな世界観を自分なりに呈した。バージェスは反面的な希望を書いている。自分の事しか考えないという事こそ全体に対する個人主義の純粋な姿であり、誰もが人間友愛と個人の尊厳が確保された美しい道徳社会を謳いたいであろう、しかしそれは究極的には相反する物を含むのである。オブライエンの狂気がなぜか美しく見えるではないか。オーウェルは絶望を書いたのである。半世紀前のロンドンは自ら命を絶った。オーウェルは病により本書を書き上げてまもなくこの世を去る。空想博愛者のウェルズや「希望」を書いたマルローの生涯とはなんとも対照的ではないか。やっぱり絶望のファンタジーよりも私はテグジュペリの「人間の土地」の方が好きだ。

2008
02/28
Thu

べき思考。

25.0% (2 / 8)
[No.26] posted by Grayfalcon

現実の1984年は4半世紀前だが、人間の本質が
変わらない事を示し続ける一冊。

タイトルの「べき思考」とは、「欝の予防」の文脈の中で
語られる言葉。
詰まり、

「『〜すべきだ』と考えるべきでは無い。」

と言う事。
丸で、二重思考だ。
このニュー・スピーキングな「物言い」自体が、
「ダブル・バインド」。
此れでは、「欝の予防」を一生懸命遣った挙句、
スキゾフレニアって事に、為るかも知れん。
場合によっては、個人単位ではなく、
社会全体が。

「べき思考はすべきでは無い!」と言うのが
2010年代と言う近未来の「時代の狂気」を表す
スローガンの様だ。

字面のレヴェルは打っ飛ばして考えると、
此れ自体は、言わんとする事は、本質的には
「法性」の問題に過ぎないのだが。
いや、日本語の場合、それより重要なのは、
「主語が存在しない」と言う事。
英語だと、ジェネリック・パースン「一般人称」だから
こんな風か。

we should not use "should" when thinking.

(大文字が存在しないのは、CAPITALIST では無い
事を示す。)

人も社会も、先ず「言葉」から狂っていくのかも。
『動物農場』にも、似た様なのが有った。

「全ての動物は平等である。
だが、ある種の動物は、他の動物達よりも
『もっと平等』である。」とかね。

2007
10/11
Thu

私はすでに死んでいる?

45.5% (5 / 11)
[No.25] posted by 有能なゾンビ

本書を読んで身の回りを再考してみよう。北朝鮮を熱狂的に罵倒し、よりよい思考や身振りで世間体に迎合することが心の安らぎをもたらすことを自覚できますか? よりよい思考や身振りは方向づけされているのか。この事実に気づいた人は人生を楽しめず、生きる屍と化すような気がします。

2007
09/05
Wed

全体主義から現代へ

69.2% (9 / 13)
[No.24] posted by ビル=デンブロウ

「1984年」と題されたこの作品は、1948年に書かれたものであり、オーウェルの頭にあった
のは戦前の全体主義・ファシズムであり、戦後の共産主義思想であったであろう。
しかしそれは決して過去のものではない。現代の我々が抱える問題だ。当初はユートピアを
目指した社会が、社会権力の維持だけを目的として構成され、いつの間にか人間そのものを
支配する社会へと変貌を遂げる、そんなソビエト共産主義に代表される社会システムはもは
や崩壊したといえる。
しかし、その後に到来したグローバリズムに基づく、市場原理主義という企業を中心とした
社会は、オーウェルが描写したのと同様ではないだろうか。
ただ一党独裁からマネーや会社内での評価中心、自身の市場価値といった物への崇拝に置き
換えられたに過ぎない。流行に乗り遅れまい、皆と異なるのはいやだから、とりあえず皆に
合せておく等、現代の我々に取り付いている先入観も1984年の社会システムであり、その
意味では、我々は今なお、オーウェルが書いた1984年から時を進めていないのではない
だろうか。人間が個人から集団へと姿を変えたときの常に突きつけられる問題であろう。
大切なのは、常に疑問を持ち、社会の存在に疑問を持つ事、そしてそれを許容する多様性を
認める社会なのだろう。

2007
06/16
Sat

現代こそ読む価値のある小説

64.3% (9 / 14)
[No.23] posted by フジキセキ

1984年といえば20年以上前、そしてこの小説の書かれたのは1948年。
古い小説と思われるかもしれませんが、実は現在こそ読まれるべき小説です。
何故ならば最近話題の社会保障番号。社会保険庁のミスをこの番号に国民全員を
登録させる事によって国民の個人情報を管理できるわけです。
個人情報漏れした場合はどうなのか?など様々な問題点を指摘されますが、
この議論をされる事自体やはり注目されるべきです。

私はオーウェルのこの作品を読んだ頃はこの内容を空想小説にしてはよく
できていると考える程度でした。
しかし昨今の国民総背番号制度を国会で討議される事からも決して
古いネタではなくて、現在こそ読まれるべき小説だと確信しています。

国民の個人情報に焦点を当てましたが、この小説は起こって欲しくない事を
見事にディストピアの世界として描いています。
読んでいると「ここまで思いつくか?」と思わせるほど暗黒世界を描写しています。
単に小説を読むだけではなくて、筆者の哲学までを思い知らされる、そういう作品です。
読み応え十二分。よく再読します。

2007
04/11
Wed

古典的ディストピア

94.1% (16 / 17)
[No.22] posted by もなか

新語法(ニュースピーク)、二重思考(ダブルシンク)といった造語、「自由は屈従である」等のスローガン、スパイ団、テレスクリーン等の監視装置、、、。本書の刊行された1940年代以降、西側諸国においてディスとピアとしての共産主義≒全体主義社会像を決定付けた記念碑的作品である。
本書の提示するイメージあまりに鮮烈過ぎたためか、オーウェル自身の意図とは離れ、逆に世間のディストピア観を矮小化するに至ったとさえ感じることがある。「1984年的でない社会」=「自由な社会」という短絡に対する警鐘は「マトリックス」の登場を待たねばならなかった。自ら考えることを放棄させる術は、本書の描くように絶え間ない監視と強制によるものではなく、むしろ穏やかで高等な環境操作によるべきであろうことは21世紀の今日では簡単に想像がつく。
とはいえ、20世紀の下半期、西側社会のバイブルであり続けた重要小説であることには間違いない。

2006
08/12
Sat

文学としては成立していないが・・・

19.0% (4 / 21)
[No.21] posted by らまりん

国家や思想と言うものを考えるには、非常に適している本である。
自由や尊厳というものを考え直す上でも、オススメしたい。
高校生からなら読みこなせると思うし、文庫本であるので
高校生の購入を切に希望する。

2006
07/09
Sun

時代の状況を背景として、将来の国家による人間精神の破壊を表現した小説。

43.8% (7 / 16)
[No.20] posted by 石岡岩石

この本は、東西冷戦体制の初期に書かれ、その将来国家とは1984年ごろに現国家群が統合されて出現している巨大国家の一つという設定になっています。
 著者のモチーフは、何か著者の次のような認識から生まれているように思えました。それは、核兵器による人類全滅という、いわば究極の個人破壊が可能な状況自体が、まさに個人の解放をもたらした近代の精神の本質に起因するならば、そのような人間精神自体は、近代社会の成れの果てである巨大国家によって破壊されるという本質を持つ、という認識です。
 この小説における人間精神の破壊は、古典的な肉体的苦痛によってもたらされることを越えて個人の心の支配に及びますが、その手段は情報管理による虚構の創出です。それは近代以降に人間が営々と築き上げて来たと思っていたものを逆向きに進むように破壊すると描かれています。古くはギリシャの歴史家ヘロドトスも持っていた客観的歴史観による認識も、更には近代以降これほど確かな客観性が積み重ねられてきた様に見える自然科学的な客観認識にまで及びます。
 情報管理による人間精神の操作に対して不気味さを感じるのは、そこにはそれなりの根拠があるからなのでしょうが、同時に情報とは単なる知識に過ぎないことに気付けば、現代の課題を解決する原理はやはり近代の精神の中にあるのでしょう。だから、著者の設定はそれなりの現実性を帯びていた当時の状況を示していると感じました。

2006
04/29
Sat

『2+2=??』

23.5% (4 / 17)
[No.19] posted by 林縦勝

 言うまでもなく、「逆ユートピア小説」の定番が、インド生まれの英国人ジョージ・オーウェルによる本作品である。

 ついでながら、「逆ユートピア」という語に明るくない方のために一言加えておくと、「地獄のような、最低・最悪の世界」といえるだろうか。

 本作品の意義は、他のレヴュアーを見てもわかるように、多面的であることが、その重大さを表わしている。だから、個々人がそのよって立つところにしたがって、様々な読み方をしても、得るところが多いだろう、と思う。文学作品なので、小生は筋に触れないことにします。ともかくも、本作は、全編、嵐の前の垂れこめた薄暗い灰色の雲の下にいるような、重苦しい印象を、小生に与えた。


 原著出版が1949年。オーウェルが30数年後に設定した世界が、現実とならなかったのは幸いだが、2030年代後半には“より”本作品の世界に近づくのであろうか?心配になる。

 身の回りを眺めるために、一読しておきたい。
 大いに推薦

2006
03/29
Wed

北朝鮮はたぶんこんな感じ

80.0% (20 / 25)
[No.18] posted by yjisan

 1984年、世界は3つの巨大な社会主義国によって分けられていた。オセアニアとユーラシアとイースタシアに。いずれも凶暴なまでに人間の自由を抑圧する、全体主義国家であった。
 その1つ、オセアニアでは<偉大な兄弟>という絶対的指導者が君臨し、個人の生活はスパイ行為の奨励、監視体制、報道・娯楽の統制などによって完全に統制されていた。思想までも「思想犯罪」の名のもとに思想警察によって取り締まられ、「新語法」による言語統制によって反社会的な考えを持つことそのものが不可能となっていた。真実は歪曲され、隠蔽され、抹殺される。党の発表だけが真実なのだ。
 この暴力と恐怖が支配する暗黒の世界にあって、外部党の党員ウィンストン・スミスは密かに体制への反発を感じ始める。そして同志を得て徐々に反逆心を強めていくが・・・?
 スターリン体制をはじめとする共産主義政権の特徴を極端に誇張し、共産主義の本質を白日の下にさらした問題作。しかも、単にスターリニズム批判、全体主義体制批判に留まらず、無意識のうちに権力の危険性と権力者の本質をも突いている。オーウェルの慧眼には感嘆するほかない。
 たしかに開高健が「悲愴な失敗作」と評しているように、物語としては必ずしも成功しているとは言い難い。あまりにも誇張がすぎて白ける部分もあるし、物語の構成もさしてうまくない。しかし物語全篇を覆う圧倒的な絶望感と狂気は私たちに危機感を与えるに充分である。その意味でオーウェルは成功したといえる。
 なお、出来映えに関して言えば、1944年に書かれた『動物農場』の方が優れている。ソ連共産主義政権を徹底的に諷刺した傑作寓話で、20世紀の『ガリバー旅行記』といっても過言ではない。なまじ陽気でのどかな雰囲気が流れている分、凄みが増している。


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