- [著]アガサ・クリスティー
- [翻訳]村上 啓夫
- カテゴリ:
- 文庫 (473頁)
- ISBN:
- 4151300171
- 発売元:
- 早川書房 (2003/11/11)
- 価格:
- ¥ 840 (税込)
- 在庫状況:
- 通常24時間以内に発送
ユーズド商品:¥ 100 より
可能性にあふれた贅沢な味わい
たくさんの登場人物に加えていっそう目をひくのは、ぜいたくともいえるほどに豊かな「可能性」の数々です。本来は家族の幸せに満ちあふれるはずのクリスマスの時期に、いくつもの「可能性」が惨劇に通じています。逆説的なようで、きわめて皮肉であり、また辛辣なユーモアにも富んでいます。
これらの「可能性」をつぶさに観察してゆけば、一見唐突にみえる大どんでん返しも、感嘆のためいきとともに収束することでしょう。
「わたしは今、あなたがたにいくつかの可能性を示したのです! これらのことは、いずれも起こったかもしれないことなのです! これらのうち、どれが実際に起こったかは、われわれは外観から内面的真実性(リアリティー)に眼を移すことによって、初めて説明することができるでしょう......」(本文より)
ディクスン・カー顔負け、聖夜の密室殺人!
この作品は一般的にはあまり高く評価されていないようであるが、私は『ABC殺人事件』や『オリエント急行の殺人』など、一般的に名作とされている作品をも凌ぐ、クリスティーのベスト5に入る作品だと思う。
クリスティーは本書の前々年に『メソポタミヤの殺人』、前年に『ナイルに死す』、そして1938年に本書と、作者の全作品の中でも最もトリッキーな作品を立て続けに発表しているが、とくに本書では作者の長編作品で唯一の完全な密室殺人を扱っている。それもディクスン・カー顔負けの、クリスティーとは思えない程のとびっきり大胆かつ大掛かりなトリックを用いているのである。
もしも本書の作者がカーならば、おそらくそのメイン・トリックを最初から前面に押し出して、読者に不可能犯罪の興味をかきたてたことだろう。
これほど見事な作品であるにも関わらず、本書の評価が思いのほか低いのは、メイン・トリックに用いられたある小道具が日本人には馴染みがないため、イマイチしっくり納得できないためではないかと思う。
また、そのトリックの現実性について疑問を呈する意見もある。
しかし、もしもこのトリックがダメというのなら、ディクスン・カーの大半の作品や横溝正史の『本陣殺人事件』など、多くの秀れた作品が否定されることになるだろう。(『本陣殺人事件』のトリックが、本書のメイン・トリックにどことなく近いものを感じるのは私だけだろうか?)
なお、本書はディケンズの名作『クリスマス・キャロル』のパロディであるともいえる。
本書で殺害されるシメオン・リーは強欲なスクルージ老人、そのシメオン・リーを訪れる登場人物たちがスクルージ老人を訪れる三人のクリスマスの精霊に見立てられる。
そういう点でも、本書は「クリスマスにはクリスティーを」のキャッチ・フレーズにふさわしい作品である。
結末がやや唐突すぎるかな?
タイトルからは華やかそうな印象を受けますが、内容は、とある大富豪の屋敷に、クリスマスのために遺産相続権を持つ親族たちが帰郷してきたと同時に主人である富豪が殺害される、というオーソドックスな、そして重苦しい空気のするミステリです。華やかなイメージを与えるようなタイトルと、陰鬱な雰囲気の漂う内容の、対比による意外性を狙ったのかもしれませんが…
トリックにちょっと無理がありますし(ドラマで映像で見て少し納得しましたが)結末についても、犯人指摘にいたるまでに読者に与えられる情報が少なく、推理のしようが無いのでちょっと唐突すぎる気がしました。
本書とは全く関連が無いのですが、ポワロシリーズの短編に「クリスマスプティングの冒険」という作品があります。こちらは実にクリスマスらしい趣向にあふれ、ミステリとしても面白いのでオススメです。
血みどろのクリスマス。
クリスティーにしては、平均レベルの作ではないでしょうか。
設定の面白さ、話の進め方(これが、ちょっとだるい)、トリック(う〜ん、これもちょっと無理あるんちゃう(苦笑)。
タイトルに“クリスマス”とありますが、別にクリスマスに関係なく読めます。
逆に読まない方がいいんじゃないでしょうか。血みどろのクリスマスですから。
クリスマス色は強くないけれど...
登場人物が多い割には分かりやすいミステリーかと思います。偏屈で嫌われ者の老人の息子達、またその妻達は彼を殺す動機を持ったものも多く最後まで犯人が分からず一転二転、また複雑な血姻関係などで読者を煙にまくはさすがはクリスティー。
