- [著]松原 久子
- [著]田中 敏
- カテゴリ:
- 単行本 (237頁)
- ISBN:
- 4163669809
- 発売元:
- 文藝春秋 (2005/08/24)
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不満もありますが高く評価します
「欧米の白人は世界中を侵略した野蛮人」というのは、戦前では
多くの日本人が認識していた事で、だからこそ太平洋戦争で欧米の
植民地から白人を追い出した事に対して喝采があがったのだろう
(実際は、原住民にとっては支配者が変わっただけだが)。
そのような見方は現代から見れば一方的だが、完全に間違っているわけではない。
ヨーロッパの歴史が好きな人にとっても、白人の野蛮性については周知の事実だろう。
現在の日本人もそういう視点を併せ持つべきであり、多くの人に読んで欲しいと思う。
朝鮮を植民地にした事や南京事件についてやたらとネガティブなイメージを
持っている事については「この人も騙されているのか」とやるせない気持ちになる。
多くの日本人も同じなのだから、一概に著者を「勉強不足」とは叱れないが、
ただ、著者がドイツ人に対して、その無知を怒ったのと同様、
著者の無知に対しても怒りがわいてくるのは仕方がないだろう。
白人が「近代化する前の日本が未開の野蛮人の国だった」と思っていたら、間違いであり、
江戸時代は経済が発展して、そのため精神的にも余裕があり、知性もあった時代だった。
しかしそれは日本だけが例外であって、中国や朝鮮が野蛮だったのは、
当時の文献を読めば分かるはず。他の有色人種も同様の所が多い。
著者がドイツで批判を浴びながら言論活動をした功績は高く評価します。
私は英語も出来ないし、日本で日本語の本を読むだけなので羨ましいです。
良書だが明治憲法のくだりはいがかなものか
日本の江戸から明治維新を中心とした所謂近代化の歴史が丁寧に書かれている。
ただ、大日本帝国憲法制定の経緯の描写は一面正しいがやや一方的に偏っているようにも思われる。その登場は果たして本当に「最初から何ら思い憚ることない『力の政治』」としてのものであったか。
結果論としては、後に憲法の曲解が関東軍の暴走に繋がったという点でそうかもしれないが憲法制定後の歴史をあまりにも変数として省いて無理矢理に所謂「南京事件」に結び付けている気がする。シナ事変へと繋がる歴史の背景も著者が言うような単純なものだったか。
全体的に日本近代史を欧米のそれとの対比で描く趣旨にこだわり過ぎて(それはこの本の趣旨なのである意味当然だが)、清、朝鮮、台湾、ロシア等近隣地域との関係をあまりにも省いたために話の整合性が一部で欠けている。それを無理に最後にこじつけた感があるのは否めない。
近代化とは恨みの行動化とその大義名分の思想を発生させる感染症
ヨーロッパの近代化とは
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1)東洋やアラブ諸国の食料や貴重品を自国の特産品で以って交換できるほどの豊かさ を持たなかったヨーロッパで発生した現象である
2)外国の貴重品を輸入するための代価としてヨーロッパの貴族階級は地元の金銀だけ では不足したために白人女性を奴隷として大量に輸出していた
3)◎科学技術の発展と武器の改良と強い軍隊の整備
◎羅針盤の発達と航海術の改良
◎異教徒と論戦し異教徒を改宗させる目的で発達させてきた弁論術と詭弁術の
洗練化
◎啓蒙思想の勃興により白人奴隷を輸出することを世論が支持しなくなってきた
などにより、「直接現地の人間を支配蹂躙して、その地の特産物を搾取する方法」
を実行する条件が整いその期が熟したのである
4)まずは「親切な商人の振りをして現地人に接近し」、「次に宣教師を派遣して改宗 させ」、「続いて、現地の政府に対しては言葉巧みに自分の有利な方向に通商交渉 を展開させて現地の政府を骨抜きにした上で」、「最後に軍隊を送り込んで征服し て自国の社会制度を押し付けた傀儡政権を建てる」という四段階で植民地化をして ゆくことになり、それが各国の競争となった
5)近代化を推進させてゆくエネルギーは「経済的あるいは地理的な意味での著しい格 差と不平等感」と、「富裕層に対する恨み」であり、それを遂行したのは野蛮な軍 事力であった
6)「恨みを晴らすための暴力的行動を拡大させること」に対して大義名分を与えてく れる思想・教義が整っていた(キリスト教、啓蒙思想、進化論など)
7)職人階級の技術的な高水準と道路・水路・郵便・金融システムの充実というインフ ラの整備が土台として存在していたことが必要条件だった
それに対して日本の江戸時代では
◎「上記の7)の項目」は既に整っていた
◎教育システムも存在していた
◎ヨーロッパにおけるような極端な貧富の差は存在しなかったし、必要な商品は国内 需要だけで足りていたので、近代化を推し進めるために必要な「恨みのエネルギー」
を欠いていたばかりではなく、戦国時代を脱してからは軍事力も必要としなかった
◎「他人に言い負かされず、他人を言い負かす」ことで相手を屈服させるという方法 論を発展させることなく、「徹底した根回しと交渉で妥協点を見つけてゆく」とい う方法を洗練させてきたので、不平不満はたまりにくかった
従って、「近代化に必要なインフラはあったがそれを推進させるための目的意識がなかった」ためにヨーロッパに比して近代化が200年遅れたのだと言える。
また、江戸幕府はオランダからの情報から「ヨーロッパ人による4)のような方法論」を熟知していたからペリーが来航する50年以上前より江戸湾に入港しようとした外国船を徹底的にしばしば大砲を用いて追い返していた。ところがアヘン戦争で清国が大敗して国内が混乱した様子やインドが英国に蹂躙されている様を知るとそれまでの強行路線を変え、@防衛力の一層の強化を図りつつ
A外国船を一旦入港させてから丁重に追い返す
という方針に出た。それがペリーの黒船事件だったのである。
その後、
1)ハリスによる不平等条約の締結後の日本の金銀が外国に大量流出してしまった、と いうことに対する恨み
2)外国人による日本での乱暴狼藉による恨み
3)外国に植民地化されて奴隷になってしまうのではないかという恐怖
これらの「恨み・不安・恐怖」が近代化促進のためのエネルギーになり、
4)殖産興業/富国強兵/文明開化という大義名分を入手した
5)明治政府による農地解放の結果、大地主が発生し大地主が小作人を搾取するという 格差社会が発生した
つまり、ここから日本の近代化が始まった
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換言すれば、「近代化」とは「経済的格差と恨みのエネルギーとそれに基づく暴力を容認する思想を伝播感染させてゆくこと」なのである。
「猿の踊り」であったかもしれないが?
本書についてレビューする前に2点指摘しておきたい。
まず、タイトルは少々過激であるが、原著は「宇宙船日本-真実と挑発」と至極、穏当なものであり、もう一つは、原著が欧米人を相手にドイツ語で書かれ、そして1989年、冷戦終了数週間前の時期にミュンヘンで出版された点である。
進んだ西洋文明がアジアをはじめとする後進地域に恩恵を与えてきたといった欧米人の思い込みは、当時は(今でも?)強く、長く欧米で暮らす著者にとっては憤りの源泉となり、これが執筆の動機となったのであろう。西洋文明の優越性といっても、実は15世紀末からの大航海時代以降のことであり、それまでは東洋の方が、経済的にも豊かで文化的であった。日本について言えば、江戸時代は3,000万人の人口を平等・幸福に存続させていくエコロジカルで優れた社会システムがあった。そして、日本は開国の時にはこれに対応できる社会体制も整っていた。著者の論調は、少々荒っぽいところも感じられるが、小気味よい。
明治維新後の治外法権、関税などの不平等条約改正のための努力は涙ぐましいものがあった。鹿鳴館の舞踏会は「猿の踊り」であったかも知れないが真摯な努力として温かく見るべきであろう。そして著者は、欧米から学んだ「武力の政治」を今度は朝鮮・中国に応用し、植民地拡張主義をとり、超国家主義化していったと指摘する。これは、いささかステレオタイプ化された考えの気がする。
序章を含めて全17章のうち第15章「猿の踊り」がなければ星5つとするのだが。
冷静な、熱い本です。
私は高校生の頃、どうしても歴史の勉強が好きになれませんでした。この本を読んで、それがなぜだったのかがわかった気がします。歴史は今現在の時間の積み重ねなのですから、当然一連の流れがあるわけで、決して突発的な出来事の積み重ねではない。その流れが歴史の教科書では見えてきませんでした。
しかしながら、この本は本当にその時代、時代の人の心の機微まで見せてくれるようです。ドラマ仕立てで説明されているわけではないのですが(むしろその逆、淡々と時代背景が語られます)、私たち日本人のものの考え方、またヨーロッパ人のそれらが、なぜ現在のようになるに至ったのか、またなぜ現在も戦争の火種がなくならずにいるのか、それらの理由をそれぞれ時代の「真実」や、時代を超えても変わらない「普遍的な何か」を見定めることによって解き明かしています。
訳者によると原著の副題は「真実と挑発」だそうで、それはこの本を通した内容、語り口調を見事に表現した題だと思います。真実が何であったか判断はできませんが、歴史の表立ったところからは見えない、「人々の実際の生活」を脚色をできるだけ省いて表そうとする文面、またその中でときおり見られる熱を持ったメッセージが、「どうしても理解して欲しい」という強力な訴えのように突き刺さります。私は読み進めるうちに何度か、涙までしてしまいました。
ちなみに、外国で暮らしたことのある方、仕事などで外国人とのコミュニケーションに苦労をしたことがある方などは、とても共感されるのではないかと思います。
本当に、この本はお勧めです。
西洋中心の近代史に別の角度からの新しい視点を与えてくれます
学校で習った世界史は西洋(白人)中心のものでしたが、それを学んで遅れていた日本が近代化出来た、本当にそうなんでしょうか?
この本は、別の角度からみた日本の近代化についての視点を与えてくれます。
日本が近代化できたのは、必要な要素が全て備わっていたから、工業化の面で遅れていたのはその必要が無かったから、軍事力の面で遅れていたのは平和に生きられて争いの必要が無かったから、学校の教育制度、商業・商品の流通システムも銀行制度もすでにあったものそれ西洋風に置き換えただけ、西洋に学んで簡単に近代先進国になれるのなら先進国は沢山出来ていたはず。 日本だけがそうなれたのかその理由がよく分かります。
この本はドイツで出版されたものの翻訳版とのことですが著者のその勇気に感謝します。
少しでも多くの日本人に読んでもらいたい本です。
目から鱗
歴史観を変えてくれる本でした。
この本を読んで、「ダビンチコード」を観たら、ヨーロッパのキリスト教的背景が理解でき、大変よかったです。
世界において日本が果たしうる役割
日本では未だに西洋文明に対して気後れしている所がある。
それに対し著者は明確に答える。
ヨーロッパにおけるキリスト教の絶対的な君臨から、真実を求める
風土が生まれ、近代文明につながった。またヨーロッパの土地は
貧しく、貿易のために白人奴隷を売りさばかなければならない
ほどだった。
そんな白人が大航海時代に世界に出て行ったのは、すべては欲得
からだった。
対して日本は圧政もなく、市場が供給過剰のため工業化の必要性は
なかったのだ。
生活空間が狭くなり資源を食い尽くすと次々に外へ侵略を
繰り返していく。
このような身勝手で傲慢な白人の個人主義ではなく
集団主義が見直されている。
日本がどのように限られた空間で平和に過ごしてきたか、
日本が培ってきた知恵が見直されるべきである、と著者は述べる。
今日、表面的には植民地は無くなり、人種差別も撤廃されたように
見える。20世紀で最も成功をおさめた国とされる日本。
そんな日本を苦々しく思っている白人は多い。
アメリカはグローバリズムのもとに、あらゆる手を使って日本を
都合の好い様に変えようとしている。
この本がドイツで出版されたのが1989年。当然、白人の知識層も
読んでいる。それが日本への理解に繋がればいいが、日本を
攻略するためのヒントとされる危険もはらんでいる。
日本は貧富の差の拡大をとめる効果的なメカニズムが存在した
ために革命も起こらず、安定して発展を遂げることができたと
書かれているが、現在の日本はどうだろうか。
長い間、日本の美点とされたものが、今、壊されようとしている。
これは喫緊の問題だ。
本書をもっと多くの日本人が読んでくれることを切に願う。
目からウロコの歴史書
白人に対して何となく気後れを感じているすべての日本人に、
是非読んで欲しい好著です。
幕末に「開国」した日本が、いかにして「奇跡の成長」を遂げたか、
それは白人がそう主張し、日本人もまた刷り込まれてきたように
「白人に啓蒙」されたのではなく、日本にすでに素地があったのだ
(「農民自治」「街道・通信システムの整備」「学校制度」「銀行」
などなど)と歴史的具体例をあげての主張は日本人である私にも
「新たな視点」を与えてくれるものでした。
わかりにくい流通システムが、実は「外圧への抵抗」から
きていたものだとは思いませんでした。
遠いドイツで、ドイツ語で「日本の底力」を言葉で表現し続けている
著者は素晴らしいと思います。
一度、読んでみてください。
とてもいい本です。
一般的に“無神教”として知られる日本人ですが宗教がないのに“高い道徳感”をもっているのは確かです。(この本に書いているわけではありません。)キリスト教はたくさんの人を救っているように見えますが実はその何百倍の人の命を奪っていることにキリスト教信者を含めて全ての人が気づくべきなのです。おそらくキリスト自身が全く望んでいない形の宗教になっているのです。日本人の仏教、あるいは神道は道徳観を形成する道具であって、“他人の考え方を変えさせる”“神の名のもとに真理を強要する”“他の民族を見下す”宗教とは違うのです。この本の全てに賛同するわけではありませんが、この本に書いてある“事実を知る”というだけでも十分買うに値する本です。
