行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書)

  • [著]友野 典男

カテゴリ:
新書 (397頁)
ISBN:
4334033547
発売元:
光文社 (2006/05/17)
価格:
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2,116 位
評価: 4.0
2008
09/23
Tue

ごまかしに要注意

80.0% (8 / 10)
[No.46] posted by zigeunerweisen

読者は非専門家だけという前提で書かれた本である。たまたま「双曲型割引率」について、本書がどのように解説しているのかを参照した。本書では、「第7章 近視眼的な心」のp.222以下に古典的な「指数割引」に対比させて、「双曲割引」を解説している(pp.225〜229)。ここで著者友野氏は、「古典的な指数割引は時間の経過にかかわらず割引率が一定である」という問題を指摘しつつ、「時間とともに減少する割引率」を想定した双曲型割引を説明している。友野氏は、双曲型の割引方法をあらわす式として、次の式を示している(p.227)。
現在価値=将来の名目価値/(1+d)
ここで、dは時間の遅れを示すものとし、「たとえば、1年後ならd=1、2年後ならばd=2・・・である」と説明している(p224)。
多少とも理論的なトレーニングを受けた読者ならば、上の式のどこに「時間とともに減少する割引率」が示されているのか疑問を抱くはずである。それもそのはずで、この式は読者を素人と見くびってでっちあげたとんでもない代物である。最も単純な双曲割引関数は、以下の通りである。なお、V(D)は遅延期間D後に受け取る報酬の効用、kは双曲割引率である。双曲割引関数は下式のようになる。
V(D)=V(0)/(1+kD)
この式から双曲割引率の変化を次式で示すことができる。
−[dV(D)/dD/V(D)]=k/(1+kD)
上記右辺から、遅延期間Dが増すにつれ、割引率が減少することが示される。本書が記述する2つの関数から描かれたはずのp.228の図も全くでたらめな図である。このことは高校レベルの数学力で見抜けるはずである。本書p.227のおもちゃのような式が双曲割引計算の基本式などと勘違いしないよう、読者諸賢の注意を促したい。
いずれにしても、入門書であればこそ、セイラーなど第一級の研究者の著作で学ぶべきだという教訓を本書は提供してくれる。この教訓を与えてくれることが本書の唯一無二の存在理由である。「標準的な経済学を超える」というレビューもあるようだが、著者自身標準的な意味で「経済学者」の範疇に含まれる人ではないだろう。

2008
07/21
Mon

経済学の素人でも、十分楽しく読める。

75.0% (3 / 4)
[No.45] posted by オオハシクマ

人間の感情を重視する経済学、「行動経済学」についての本。

いくつもの思考実験や具体例を通して、
いかに人間の行動は合理的とはほど遠いか、考えさせられます。

私は標準的経済学のことはわかりません。
しかし、そんな私でも上記の具体例が興味深く、楽しく読むことができました。

千円手に入れたときの喜びよりも、千円なくしたときの悲しみの方が大きくありませんか?
食べ放題の店に行ったら、お腹が苦しくても元を取ろうとしませんか?
600人中、200人が死ぬ政策よりも、400人が助かる政策の方がよく思えませんか?
ピンと来た方、オススメです。

400ページと新書にしては厚いし、内容がやや難しいところがあるので、
サクッとは読めないかもしれません。
しかし、何度も目から鱗が落ちるし、実生活で役に立つ知識も多いです。
飛ばし飛ばしでも、ぜひ読んでみてください。

2008
07/13
Sun

指摘されないのか?クイズの矛盾

66.7% (10 / 15)
[No.44] posted by Lestat

全体的に高い評価を得ていますが、いくつか思考の掘り下げが安易かと感じる部分がありましたので、評価を厳しくさせていただきました。
「詭弁」とも思われる論理誘導がある部分に関してどうしてもひっかかりを感じます。
いくつかあるのですが特にわかりやすいのが下記の2点。

1)文中に出てくる下記のクイズの設定に疑問

「ある致命的な感染症にかかる確率は1万分の1である。あなたがこの感染症にかかっているかどうか検査を受けたところ結果は陽性であった。この検査の信頼性は99%である。実際にこの感染症にかかっている確率はどの程度であろうか?」

著者は、上記のクイズを多くの人が間違う事実をもってして「人は事前情報を軽視する(この場合は病気の感染確率が事前情報)」としていますが、この問題にはちょっとしたトリックが隠されています。

この問題設定では、読み手は”直感的”に「検査の確立は絶対に普遍だが、感染にかかる確率は1万分の1で常に一定なわけではないよな?(その人が接触した人や事前の健康状態によって感染確率が変わるよなあ)」と感じてしまわないでしょうか?

たとえばもしこの問題が、
「あるコップの水を飲むと必ず1万分の1で病気に感染するが、その水を飲んだ人間が・・・」と設定されていればどうでしょうか?
これでも同じように人は事前情報を軽視するのでしょうか?

行動、認知を限りなく正確に推し量ろうとするのであれば、測定したい部位以外で余計なバイアスがかかりそうなリスクはすべて排除すべきではないでしょうか?

著者はあらかじめ人間が直感的に事前情報を軽視してしまいそうな問題を引用して「ベイズ・ルール」を説明しています。
くりかえしになりますが、「事前情報」があやふやな問題ならば、「事前情報」を軽視してしまうのは当たり前でしょう。詭弁にしかなりません。


2 著者が挙げた下記の例があまりにも安易

ある雑誌に「会社の社長の70%が毎日日記をつけていた。だから日記をつけるのは成功の秘訣」と書かれていたことを著者は批判しているのですが、
そのためにあげた例が「もし会社の社長の90%が毎日歯磨きをしていたら、歯磨きは成功の秘訣といえるのだろうか?」というものがありました。

日記のロジックを批判することそのものは間違っていないと思いますが、そこに出してくる材料が「歯磨き」とは、学者としてはあまりに安易です。日記の文脈に説得力がある(ようにみえる)のは「日記」が比較的多くの人にとって「近いようで遠い」存在だからです。「歯磨き」と「日記」はその観点で、文脈の中における本質的な意味がまるで違ってしまいます。

意味が違った文脈ならば、人が受け取る意味が異なるのは当然ですよね?
「歯磨き」のかわりにもっとこう「毎日トイレで新聞を読んでた」みたいな(笑)、もうちょっと気の利いた例を出せなかったのでしょうか?

このように、著者は「本質的な意味で重要な文脈」を比較的安易に摩り替えています。ご本人も気づかれていないのかもしれませんが、「認知科学」にも近しい分野のなかで、前提条件の条件設定が雑であることが残念です。このことにレビュアーのどなたも触れていないことが不思議でなりません。

また、学者さんですから仕方がないと思いますが、新書として考えると、あまりにも文章が不器用です。

2008
06/21
Sat

新書のレベルを超えた良書

60.0% (3 / 5)
[No.43] posted by 経営企画担当

新書版ですが内容は非常に濃い本です。行動経済学の基礎的な事項が分かり易く、しかも、理論的に説明されています。特に参考になるのは本書の巻末の「主要参考文献」です。日本語で書かれた本の場合、ほんの申し訳程度の参考文献しか挙げられていないものが(専門書を含め)数多く見受けられますが、本書では英語の文献を中心に数多くの参考文献が挙げられているので、これを参考により深い学習ができると思います。

意欲的な学習者をより「高み」に導びくという、入門書の原理原則を忠実に守る非常に良心的な本だと感じました。

2008
05/18
Sun

既存の経済学を見直す

80.0% (4 / 5)
[No.42] posted by pacman

既存の経済学ではその議論の前提として,
完全に合理的な経済人を置いていますが,
それは少し考えてみればおかしいと分かるもの。

行動経済学は人間の感情の及ぼす影響を考えに入れ,
人間の行動の本当の姿を調査しようというものです。


この本には非常に情報が詰め込まれており,
多くの行動経済学やその周辺での議論が詰め込まれています。
まだ完全には普及しきっていない分野での入門書,
あるいは紹介書的な位置づけとしては非常に有用であると感じます。

この本単体では学問的な理解にとどまるかもしれないですが,
既存の経済学と組み合わせて考えてみたり,
あるいは心の持ち方といったことと併せて考えていくことで,
学問だけに限らず,実用の面までにも役立ち,
様々な可能性をもった議論展開が可能になるように思います。

2008
05/16
Fri

不合理ゆえに吾信ず―「勘定」から「感情」へ

50.0% (3 / 6)
[No.41] posted by 仮面ライター


 はじめに、この友野典男・明大教授(当書刊行時)の著書は、“新書版”ながら397頁に上り、サクッと読むには、少々しんどかった、というのが私の偽わざる感想だ。特に、第9章「理性と感情のダンス」となると、「感情の働き」や「脳神経科学の方法によって探究しようとする『神経経済学』」(本書P.324)、あるいは「進化の力」といった課題を展開するのだけれども、これらの内容を詳細に論述するだけで、優に1冊の“新書”が書けるのではないだろうか。実に「勿体ない」ような気がする…。

 さらに、もう少し第9章を眺めると、「より良い意志決定のために重要な役割を果たしているのは感情だということが、最近の心理学や脳神経科学の発展により明らかにされつつある」(同P.324)みたいだ。そして、私に関しては、標準的経済学が想定する「経済人(ホモ・エコノミカス)」―「感情に左右されず、もっぱら勘定」で動き、「市場は重視するが、私情や詩情には無縁」で、「金銭に触れるのは好きだが、人の琴線に触れることには興味がない」(同P.325)人間―を演じ切れそうもない。

 ところで、年金の問題について、たとえば「個人が自分で貯蓄すれば十分だし、無年金者を防ぐには民間の年金に強制加入させればよい」といった論調がある。すなわち経済教科書的な人間、つまり自分の将来を確実に予見し、未来の消費行動等を計算しうる“超合理的な経済人”であれば、せっせと蓄財に励むのだろう。しかし、本書にある「現在志向バイアス」をもち、「時間非整合的な行動」をとる“生身の人間”に、それは殆ど無理というものだ。だからこそ、公的年金制度とその財源調達手段の議論が必要なのである。

2008
04/28
Mon

分からないところは飛ばして、分かるところをじっくり読めば身につく。

50.0% (3 / 6)
[No.40] posted by くりぴょん

○読み始めたきっかけ

 タイトルに惹かれて購入しました。イトーヨーカドーの鈴木会長の言葉で、「消費
は経済学ではなく心理学で考えなければならない」というのがありました。すでに日
本の経済は成熟しており、不足しているものを買う合理的な状態ではなく、どうして
も必要はないが買ってもらえる、選ばれる商品作り・展示ディスプレイをしなければ
ならない。よって、消費者の心理を知ることが重要なのだと。この本でそんな消費者
心理・行動原則を勉強できればと思いました。

○心に残る言葉

p.72 喫煙や飲酒などの習慣がなかなか止められないのは、行為時点とその結果が現
れる時点とが時間的に大きく隔たっており、行為する時点では、長い間経った後にど
んな結果が引き起こされるのかについて想像するのが難しいことが原因の一つ。

→免許更新の講習には、交通事故の悲惨さのビデオが流れるが、これは将来の出来事
をビジュアルに訴えかけて、今の安全運転を促すという目的だということが分かる。
逆に言えば、将来の自分のなりたい姿、夢をビジュアル化すれば、自分の目的が達成
できるということも分かる。壁に標語を貼ったり、欲しいものを写真で貼れば、今の
行動に影響を与えることができる。

p.102 交際相手や結婚相手を決めるのに、相手との付き合いから得られるであろう
プラスマイナス全てを考慮して合理的計算に基づき決定することはできない。考慮す
べきことが多すぎて計算には膨大な時間がかかるであろうし、不確実性が大きすぎ
て確定的な結論は出そうもない。そこで、愛情を感じた相手を選ぶことが多い。

→若いころの方が結婚しやすいのはこういうことなんだろうと思った。思春期は愛
情の深さが深いので、結婚という不確実性を迷いなく決められる。30歳を越えると、
確かにプラスマイナスを考えて合理的に計算しようと思ってしまう。しかし、確かに
不確実性の要素が大きすぎて決められない。愛情も自分の気持ちが変わるかもしれな
いし、相手の気持ちも変わるかも知れないので、安定的な要素とは言えないが...。

p.116

 効用または不効用をもたらすのは富の変化であって絶対量ではない。

→これは大学時代に学部で勉強した記憶があります。現在の状態を所与としてそこ
からの変化によって、効用を感じるのだと。イメージ的は効用曲線のグラフの傾き
ですね(微分)。

p.169

 日本の失業率が低いのはこのような調整可能なボーナス制度の功績であると彼ら
は主張している。

→月々の給与は既得権益でこれが下がることは非常に抵抗があるが、ボーナスは元々
変動するものとの認識があるので、景気が悪い時は給与には手をつけずにボーナス
で調整しても社員の満足度は大きく下がることはない。アメリカでは年捧制が多く、
業績に応じて月々の給与も大きく変動してしまうので、景気が悪い時は実際以上に給
与が下がったと感じてしまう。

○どんな人に読んでもらいたいか。

 大学で経済を専攻していましたが、正直、全部は理解できませんでした。ただ、
基礎知識はあったので「なるほど」と思うところもかなりありました。読み応えの
ある本です。分からないところは飛ばして、分かるところをじっくり読むのが身に
つくと思います。

2008
04/13
Sun

人間の行動って面白いと思えます

75.0% (3 / 4)
[No.39] posted by nori@amazon

全ての人間が利己的に動くわけではない。
経済活動に置ける人間の動きを、感情を取り混ぜて紹介しています。

つまり、人間の様々な行動、判断においては、経済学的な利己的な合理性のみで動くものではなく、
物質的満足と併せて、感情的な快楽、この2つがバランスを取って合理的に動き、
物事を判断するとしているのです。

実験結果の内容を織り交ぜ、幾つかの理論と事象を紹介しています。
内容に寄っては、経済学で見るような複雑な数式も出てきますが、本質的な部分ではないので
そこは飛ばせば、分かりやすい内容だと思います。

新書ではありますが、そこそこページ数もありますから、読み応えもあります。

2008
04/06
Sun

むずかしかったです

60.0% (3 / 5)
[No.38] posted by ma-ri

これは正直、私にはツライ本でした_| ̄|○
きっと内容はきっちり書かれているので、良書なんだと思いますが、
書いてる内容が、全く理解できないところがいくつかありました。

読んでて、「えっ?なんで?」みたいな感じですね。

読みやすいところで言えば、
A…大好きなアーティストのライブチケットを友達から5000円で買いました。
  前日、そのチケットをなくしました。

B…チケットはなく、当日ライブに行きました。そこで、現金5000円を落としてしまいました。

AとBの場合、あなたはどちらならライブに行きますか?

みたいな、起こっている事象は同じだが、感覚として別の選択肢を選ぶ。

ということについて、ゲーム理論も含めながらがっつり解説されています。

自身は理系ではなく、文系のヒトなんだな。って感じました・・・。

2008
03/28
Fri

標準経済学との相違を考えながら読むといい

66.7% (2 / 3)
[No.37] posted by ながさき

行動経済学を焦点にあてたものの中で、おそらく最もわかりやすく書かれた本
他の本に比べ全体的に軽い"読み物"としての印象が強く、好奇心を満たすにはもってこいかも

個人的に、行動経済学を学ぶにあたっては標準経済学に対する位置づけを抑えるといいと思う。
それに関して「セイラー教授の行動経済学入門」の中に非常に興味深い内容が書かれていたため、そちらもオススメ。
ただしこっち(セイラー)は少し難解。


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