- [著]松永 和紀
- カテゴリ:
- 新書 (259頁)
- ISBN:
- 4334033989
- 発売元:
- 光文社 (2007/04/17)
- 価格:
- ¥ 777 (税込)
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健康情報のいい加減さ
何十年にもわたって様々なダイエット方が発表されるにかかわらず、どれひとつとして定着しないことや、ファーストフード店やコンビニで売られている食品が健康に良くないと言う一方で、それらが増加しても日本人の平均寿命が伸びていると言う事実に言及しないなど、健康に関する情報はいい加減なものだらけであると言うことを再認識させてくれる。
そう言った情報が無くならない構造に関しても触れているが、その構造は当面壊れそうもないので、あとは受け手側で自衛するしかない。それをする上で役立つ著作である。
メディアを中心とした自己中心的で恣意的な情報の取捨選択・操作による「メディア・バイアス」が働く構造や実態を解き明かし、それに騙されない視点や思考を提示。
世の中に蔓延する、センセーショナルで分かりやすく「科学的に正しい」っぽく見えるニセ科学やトンデモ科学者・理論、これらを自分たちに都合のいいように煽り利用するメディアや企業・組織・市民団体など、そして簡単に盲信してしまう視聴者・消費者たち。このような「科学っぽい衣」をまとった嘘や怪しげな情報を氾濫させる、メディアを中心とした自己中心的で恣意的な情報の取捨選択・操作による「メディア・バイアス」が働く構造や実態を解き明かし、それに騙されない視点や思考を提示している。
本書で問題提起された代表的な事例は、「白インゲン豆ダイエット」「納豆ダイエット」「みのもんた症候群」「中国産野菜残留農薬問題」「フードファディズム(タマネギが糖尿病にいい、リンゴポリフェノールが脂肪吸収を抑制するなど)」「食物繊維と大腸癌との相関」「環境ホルモン騒動」「化学物質過敏症」「添加物バッシング」「有機・無農薬栽培は安全か」「マイナスイオン効果」「水からの伝言」「遺伝子組み換え大豆の危険性」「バイオ燃料」など。
著者の履歴・専門から食や農業に関わる健康情報の事例を中心に論じているが、美容業界など他業界にも大いに当てはまる内容だと感じる。
メディアには自習・自浄能力はないと思っておかなければならないだろう。自分で情報の収集力と選択眼を磨くしかない。あらゆる人たちに読んでもらいたい本。
類書の中では一番
多くの人々が憂えたり批判したりしているのだが、世間にはとんでもない「科学情報」が氾濫している。そのような擬似科学的なことについて、すでに著しい数の書物が出版されているが、その中では最も読まれるべき一冊である。感情的にただ羅列するのでもなく、また、皮肉に茶化したりするのでもなく、擬似科学がはびこる原因になっているさまざまな要素を丁寧かつ簡潔に説明している。擬似科学批判の本の中では真っ先に読まれるべきものであろう。
本来常識であるべき非常識:十把一絡げな感もあるが
たいへんに読みやすく、よくできた本である。健康情報という名でもたらされるさまざまな誤りが、人を如何に動かすかよくわかる。多くのレビュアー諸氏が既に述べているように、たいへん価値のある本である。特に、メディア自体の特質の問題、つまり故意なくしてもなお、報道がおかしな方向にいってしまうことの指摘は重要だ。私も某テレビ局からインタビューを受けた際、どこをどう曲解するとこんな話になるのかわからないような番組内での扱いになっていて吃驚したことがある。
しかし少し気になるのは、話が分かりやすい反面非常におおざっぱで、逆に誤解を招きかねないような記述が見えること。殆どの食品添加物に問題がないことは事実だが、全てではないのは確かだし、官側の機関によるデータが全て信頼しうるかというとそうでもない(タミフルの副作用報告集計なんか予測と逆のものだったからどこかに消えてしまったし)。みのもんた症候群は論外だが、しっかりした眼をもってものを判断するのは案外に難しい。乗せられやすい我々、日々のニュースに対する反応さえメディアの思惑通りになっているようだ。全地球的な情報が集まる中、身の回りのことだけの矮小な判断力しか持たなければ、太刀打ちすることは到底不可能。もっと広い視野を、と自戒する。ともあれ一読の価値あり。
この本自体にもバイアスがあるという認識を。
科学情報について,報道を鵜呑みにするな,という視点では良書だと思う。
しかし,「あるある」や「みのもんた症候群」,ニセ科学などについての記述は
ともかく,例えば環境ホルモンのような,まだ研究途上にあるものについて「騒動」
などと一蹴するような姿勢の著者が,「メディア・バイアス」を語ることには違和感
がある。
例えば環境ホルモンについては,実際にまだまだ新しい知見は出続けており,
環境ホルモンの一種,ビスフェノールAについてはアメリカ政府が「現在の摂取量が、
胎児や子供に対し、神経系や行動、乳腺へ影響する懸念がある」という報告書を出した
ばかりだ。
また,この著書が著作の中で「冷静」などと好意的に取り上げている人々も,一方から
見れば,市場経済における弱者にリスクを受任させようとする強者の論を振りかざして
いる,と批判されてきている人でもある。
この本もまた,メディア・バイアスの一つであり,鵜呑みにしてはいけないと
いうことを認識しつつ読むべきだろう。
胎児や幼児は別だったんだ
妊娠を機に「無農薬」やら「せっけん」やらに走りそうになった時
理系の友人から「一概に悪いといえない」という説を教えてもらったことがある。
妊婦向けの本などだと大概「化学調味料は悪者」なため、もっとフェアな目でみなくては
いけないのだな、と思っていた。この本を読むまでは。
「マウスで安全な基準の100分の1の量を超えないようにしているから安心」という
農薬も結局「幼児や胎児には」今後の調査が待たれるのですね。人が無農薬や有機に
走るきっかけというのは、出産や病気などが多いと思うので、そういう人にとっては
決してマスコミの「オーバー」で「偏った情報」もないほうがいいものではないのかも
しれない。少なくとも問題提起にはなる。
とはいえ農薬の部分や添加物、化学物質過敏症の話などうなずけることばかりで
とても勉強になった。「しょうゆも一気に飲めば死ぬ」というのと同じ話(違うかも
しれないけど)と考えれば、農薬の基準値はいかに安全につくられているのかも
わかる。
しかし著者にも何かのバイアスがあるかもしれない。(本人も慎重にそうならない
ように気をつけているのは感じられるが) たとえば【遺伝子組み換え作物では
膨大な検査をしたのでもう大丈夫】と言っているけれども この作物が最初に実用化
されたのが96年。まだまだいつでも「大丈夫だといわれていたのに・・・」という
実験結果があらわれてもおかしくない。と、文系の私などは過去の経験から思う。
悪い結果が出るまで検査をし続けるのか?と科学者からは笑われるかもしれないが
それは「科学は完全」というバイアスなのかもしれなくはないか?科学ではわからない
けれども麻痺が起こるもの(たとえば医療用の麻酔)とかもあるではないか。
特に自分のためではなく、胎児・幼児のために食品について考えている人の場合、
著者のいう「科学的に安全な」は「まだ科学的にダメという結果を見つけられて
いないだけ」と思ってしまうことがあると・・・そう思う私は マイナスイオンに
踊る人と同じレベルにいるだけの話なのだろうか。
とはいえ、ベストセラーの「環境問題はなぜウソが〜」などと比べると非常に文章も
うまく説得力がある。さすがはプロの書き手だと感じさせた。
本書が追っている相手は我々の想像を超えて大きいのかもしれない
本書、第8章は、
「一見無関係のマイナスイオンと水からの伝言を調べていくと、一人の人物につながりました。」
という書き出しで始まるいささか唐突な記述で終わります。(慎重に実名は秘されていますが)
最近になって、この「人物」が不祥事のため「ある要職」を辞したとのニュースがマスコミを賑わしました。
本書が追っている相手は我々の想像を超えて大きいのかもしれない、との思いを新たにしました。
著者の真摯な姿勢に頭が下がる思いです。
科学報道の問題点
『アルツハイマー病の誤解』と立て続けに、科学報道の問題点に関する新書を読んでしまった。メディアにあふれる健康情報や危険情報の多くが偏ったものであることを指摘し、それを報道する側の不勉強をまず批判して、科学者・行政の対応も足りないと指摘する趣旨は同だ。しかし、本書の方が構成もねられているし、議論もしっかりしている。それに、著者が新聞社の内部にいる『アルツ・・・』より、フリーの科学ジャーナリストによる本書の方が反発を感じない。筆一本で勝負している人間と、ぬくぬくとしたサラリーマンの差かもしれない。読まれるなら本書の方を推薦します。
本書は科学報道に焦点を当てているのだが、経済報道でも政治報道でも同様の問題点を私は感じている。いずれの場合もメディアの前線に立っている記者の不勉強が第一の原因である。その背景には、日本のジャーナリズム業界で専門家を育てない慣行があるのではないだろうか。スポーツ報道を見ても、信じられない質問をする「キャスター」がいたりして、「素人の視点」にもほどがあると思う。経済でも政策でも科学でも同じで、論理を紡ぐ努力をせずに、「素人の視点」で目先の善悪のみを断罪しているのは極めて危険だ。
そのもう一つ背景には、大衆の「アンチインテレクチャリズム」があるのではないかと私は疑っている。アメリカでもこれは大きな問題で、ブッシュがゴアに勝った最大の原因はここにある。ヨーロッパではエリートがまだまだ威張っているので、歯止めがかかっているのだろう。わが国では政治指導者が平気で「難しいことは分からない」と言っちゃうのだから病は深い。
結局、メディアはその「アンチインテレクチャリズム」に乗っているだけかもしれない。メディアだって大衆の好みにそった情報を流しているだけだと言う指摘が本書にもある。ニワトリが先なのか、卵が先なのか。なんとも難しい。
メディアの科学記事を冷静に見れるようになる本
○○は危険、○○を食べると・・・、という情報の罠や、マイナスイオンや水の伝言といったニセ科学について、等、メディアが報じるもっともらしい情報について、冷静に分析し、注意を促しています。
化学に関する実験の難しさについてのくだりは、筆者も複雑といっているとおり、読んでいて複雑でわからなくなってしまいますが、実験の条件等については、自分達も犯しそうな誤りを指摘してくれます。
また、政治経済に翻弄される科学、の章は、さすがに読んでいて恐ろしくなります。こんなことが国をあげて行われているのかと思うと、ぞっとします。
一人でも多くの人がこの本を読んで、メディアを冷静に見る目を養うことから始めてほしいと思います。
マスメディアに自浄能力なし
この本を読んでいるときに、まさに、
「中国産冷凍ピーマンから基準の4倍の残留農薬検出」
というニュースが入ってきた。それに対する女性キャスターのコメントが、
「ただちに健康に被害を及ぼすおそれはないといっても、毎日食べれば……」
というものだったのだ。
情けないが、マスメディアには自浄能力はない。様々な構造的要因によって(だからといって、電波を取り上げろなどという議論が出てくるようでは、極めて危険な兆候である)。インターネットというものがあるのだから、我々一人一人がさまざまな方面から情報を収集し、日頃からリテラシーを高めておくしかないのである。
残留農薬の件で言うと、その野菜を、毎日小皿に一杯分食べるのと、毎日トラック1台分食べるのを一緒くたにするわけにはいかないことは明らか。「量」の概念を無視して論じても意味がないということは、科学の基本。
「○○は体に良い(悪い)」という言説を吹聴することで、儲かる輩は必ずいる。これも良く考えれば分かること。食品添加物告発本を書いた、元「添加物の腕利きセールスマン」は、「自然塩」の会社に在職していて、著書には会社の電話番号まで記載していること、「環境ホルモン問題」が騒がれたとき、省昇格を目前に控えた環境庁(当時)と研究者の間で「研究費バブル」が起きていたこと、トランス脂肪酸問題でも、マーガリンを撲滅すれば、バターやパーム油の生産国は儲かる……。
読むに付けて胸糞悪くなってくるのだが(もちろん、この本の内容ではなく、マスメディアや御用学者の腐れっぷりに)、“健康情報”に関心がある人に対しては、「必読の書」としておく。
