- [著]五木 寛之
- [著]香山 リカ
- カテゴリ:
- 新書 (250頁)
- ISBN:
- 4344980875
- 発売元:
- 幻冬舎 (2008/06)
- 価格:
- ¥ 777 (税込)
- 在庫状況:
- 通常24時間以内に発送
ユーズド商品:¥ 103 より
鬱の時代に生きる我々に内在する力
元々対談形式の本は好きではないのだが、両氏のファンであるので購入してみた。
うつに対する香山さんの医学的アプローチと五木さんの文学的・哲学的・宗教的アプローチが見事で最後まで面白く読みことができた。
うつの時代ー今は政治家の顔も料理も通貨も「うつ」。高度成長期(躁の時代)からうつの時代へゆっくりと降りていく時代の中で、自らを見失わず受け入れること。ヨーロッパの大国を例にあげていたが、こういうのが本当の「愛国心」なのではないだろうか。うつの中にも自己に内在する力、積み上げてきた誇りがあるのだ。
個々人のうつ病だけでなく、うつの時代うつの国といった視点から考えてみるのも有益だと感じさせてくれた一冊だった。
簡単に想像できる内容かな
五木寛之氏の著書では、自らが鬱になった経験をもとにした内容の本を以前も読み、人生の意味や宗教の意義など、いろいろ考えさせられました。でも私は香山リカ氏は精神科医なのに、セレブみたいに受け狙いの本を書くのであまり好きになれません。本当の精神科医は実際に病院で患者を診たり、研究したり、論文を書いていたら、こんなことをやってる暇はないはずなんですが。今回も五木氏が香山氏と対談して、話だけ併せているような部分が感じられました。あまり内容の濃いものではないし、はっきり言ってすぐに想像できそうな内容です。五木氏が受け狙いに乗せられてしまった、ということでしょうか。タイトルの「〜の力」ももう今となってはミーハーだし。読者に「あ〜、精神科医と作家の難しいものを読んだんだわあ、すごい、私って。」と表面的な満足感を与えるのがねらいかもしれませんね。
日本社会の様相が感じられました。
興味深い対談でした。五木氏は、社会全体が躁から鬱に移行して鬱の時代始まっていると説いています。鬱な気分とうつ病とは違うもの、鬱な気分とは本来人間に備わっている感情で、むしろやさしさ、生命力を内に秘めた状態を言っているので、ちょっと鬱ぐらいが普通ではないか、鬱を愁といった日本人が戦後失った感情という五木さんの最近の著作にみられるお考えを元に対話がなされています。香山先生は、精神科のお立場から急増するうつ病患者を扱う立場から、病気としてのうつ病と鬱な気分との境目が難しいことや、グローバルスタンダードでうつ病が定められていること、うつ病は増えている一方で統合失調症は減っていることなど医療現場の様子を回答し、対話が進むことで今の日本社会の様相を映し出していくように感じました。特に第2部「日本社会は劣化したのか」は、病院までもコンビニエンス化し始めている状況が語られ、背筋がゾクっとしました。うつで苦しむ人は大勢おられます。うつ病になって悩むのは、何故うつになったかということでしょう。うつとは何か。とても参考になると思います。
欝や鬱的気分を肯定的に考える視点
明るく元気で面白い人がもてはやされる現代において鬱や鬱的な気分を肯定的に考える五木氏の考えは共感できる。確かに気分が落ち込んでいるときに元気な人と居るとかえって辛いものである。ただ著者たちの対談を読んでいると奇麗事も多く、例えば自殺しようとしている人に病気で苦しんでいる人や必死に資金繰りをしている人の事を考えろと言うのは無理ではないか。また悩みを抱えて苦しんでいる人に他人に対する想像力を求めたり、古典文学を読んだりすることを勧めるのも現実的ではないと思う。そんな余裕があれば大した悩みではないのだ。
しかし本書では人間が時々鬱的な気分になるのは当然の事と言っている様であり、根暗人間にも市民権が与えられたようで喜ばしいことである。
「うつは治さねばならない」と考えることへの問題提起
もともと五木寛之氏は「マイナス思考」を提唱している。
世の中がすべて「プラス志向でいけ」という時代、そんなに焦る必要があるのか、
あるいは少し気が沈み込んでも、それを「悪」ととらえて急いで元気になる必要があるのか――
というわけである。
ところが、今の日本は、少し気分が落ち込むと「それはうつだよ」とか言われる。
うつが認知されたのはいいことなのかもしれないが、
「それはうつだよ」と言うことは、「だから治さなければならないよ」と言うことにもつながっている。
うつと、治療が必要なうつ病は分けて考えるべきだというのは、私も賛成だ。
香山リカ氏は、常にそのことを言い続けてきた。
ただ、ちょっと軽率なところもあり、「仕事中だけうつになる人たち」といった、
間違った反応を示すような本を書く。
五木氏との対談で彼女のその「軽さ?」が出ないか心配ではあったが、
さすが五木。きっちりとコントロールしている感じである。
泣いたり悲しむことから「力」をもらうのだ――これが五木寛之の人生観でもある。
だから巷の「うつ」の多くは「軽い落ち込み」であり、それを「悪いこと」とするから
治そうと焦りかえって悪化するのだ……とも言う。
個人的には第二部の「日本社会は劣化したのか」がいちばん面白かった。
痛烈な社会批判になっているが、嫌味がない。
「うつ病を治す本」ではないかもしれないが、即効性はなくても、
気持ちの持ち方を変えて、うつを受け入れて生きることができるようになる本である。
軽症うつの人などには、ぜひ読んでほしい。
やたらと字が大きく、新書でもあり、あっと言う間に読めてしまう。
鬱に対するリフレーム
福岡出身の五木寛之と、北海道出身の香山リカの対談。テーマは鬱について。
最近の直木賞受賞作について論じたり、最近の政治家やスポーツ選手の騒動が出てきたり、昨日今日なされたばかりの対談のように錯覚する。
対談であるから、一つのテーマを絞り込んで探求するような整合性や一貫性よりも、一つのテーマにまつわる周辺のこもごもに触れる多様性や包括性のほうを楽しみたい。
うつ病についての議論が盛んな今、うつ病と欝状態を区別することはきわめて大事だ。
対談は、病として治療対象にすべきうつ病とは別に、時代の持つ欝の雰囲気、欝の力、欝という可能性を提示する。
ちなみに、クラインが抑うつポジションという言葉で、抑うつに持ちこたえる力を身につけることが成熟の糸口になることを既に示している。
うつ病の安易な拡散を問題視し、病気だから治せばよいという短絡的な発想へ警鐘を鳴らす本が出てくることは、事態の正常化のために歓迎したい。
躁から鬱への時代の転換
「鬱病」ではなく、「鬱な気分」をテーマにした対談です。
日本は右肩上がりの経済から右肩下がりの経済に向かいつつあるところだが、
人びとの意識も右肩上がり(躁)から右肩下がり(鬱)に向かっている。
(少なくとも日本では)20世紀の後半から21世紀の前半にかけて、社会全体の流れが躁から鬱へと転じてきてた。
躁の時代が戦後から50年続いたことを考えると、鬱の時代も50年は続くのではないか。
鬱の時代を生きるには「鬱の哲学」を持つ必要がある。
歴史は熱狂と閉塞を繰り返してきた。
今は熱狂が冷めて閉塞に向かうところだから、こんな時代だからこそ、鬱の力で人間の内面を豊かにし穏やかに生きていきたい。
この五木寛之の考えかた、持論に沿って対談が進んでいく。
6月15日に発売されたばかりなので対談に登場する話題がすべて「旬」で、それもあってわくわくしながら読んだ。
なかなかのお奨め本です。
新刊で買っても値段が高いとは思わないでしょう。 お買い得ですよ。
鬱をどうとらえるか
鬱イコールよくないこと、と決めつけていな
いだろうか。
本書は、五木氏の鬱に対する独自の考え方と、
香山氏の精神医療の実態を交えた話しが興味深い。
鬱な気分とうつ病は区別して考えなければい
けない、と五木氏は言う。
会社に行きたくないとか仕事がつまらないと
いった気持ちは、生きていれば普通に起こること。
鬱な気分だから薬を飲んで治さなきゃとか病院
にすぐに駆け込まなきゃというのは違う。
五木氏は、なんでもかんでも鬱の気分を治さな
ければいけないという考え方に警笛をならす。
鬱を時代の流れとして、大きな枠組みでとらえて
いるのもおもしろい。戦後からバブル期まではず
っと「そうの時代」、今は「鬱の時代」。
鬱の時代には鬱で生きると主張する。
鬱を切り口に五木氏と香山氏は今の閉塞した時代
にも言及する。
格差社会の一番の問題は、格差ができることでは
なく、異なる人々をブロック分けして排除していく
こと。
鬱をよくないことととらえ、治さなければ排除さ
れるという風潮と通ずるものがあると思った。
鬱をどう考えるか。これからの時代、自分なりの
鬱のとらえかたというのは重要になってくるのでは
ないだろうか。
本書はそれを考えるきっかけとなる。
社会心理学の書としては面白い。
この本をタイトル通り、「鬱」を直すための医学書、あるいは近道として適用することは適切ではない。政治・経済の書物ではなく、しかし医学の書でもない、五木・香山、両者の社会心理への切り口はなかなか面白い。
社会そのものの鬱(総理大臣、犯罪心理、作家、医師、哲学、宗教など)を歯に衣着せず斬っている。戦後〜バブル期を「躁の時代」その後を「鬱の時代」と切り分け、様々な問題について語っている、あまり類のない対談本だ。社会風刺でもなく、政治信念にもあまり偏ることなく、宗教だけを述べているわけでもないあたりに、快感を覚える。
さらりと読める大きな文字、控えめなボリュームも魅力的。「自分だけが『気が狂っている』のではない、社会全体が危機に瀕している」というトーンは、作家としてのキャリアが長い五木氏と、独特の精神医学概念を持っている香山氏の対談らしいものである。
うつ病の回復期患者さんは読むべき一冊です
現在、うつ病回復期の波で苦しんでいます。うつ病自体は薬もあって良くなってきて、思考能力も回復してきたのですが、逆に躁鬱の波が押し寄せてきてたまりません。
そんなときに、回復期の思考能力でも、少しずつ読めるので、とても納得できました。
認知療法の本を一生懸命読むよりも、こちらの本と「大河の一滴の第1〜3章」、それと「うつからの完全脱出」下園壮太著を読んだほうが、回復期の患者にはいいと思います。
それと、瞑想・座禅もやるといいですね...
