- [著]黒木 亮
- カテゴリ:
- 文庫 (494頁)
- ISBN:
- 4396330596
- 発売元:
- 祥伝社 (2002/07)
- 価格:
- ¥ 750 (税込)
- 在庫状況:
- 通常24時間以内に発送
ユーズド商品:¥ 56 より
隔世の感
この本を読み終わってこれを書いているのは2008年9月です。
先日、サブプライムが原因で米大手投資銀行リーマン・ブラザーズが事実上倒産。
東京三菱UFJがモルガンスタンレーに、野村證券がリーマンに、
そして噂ですが三井住友がゴールドマンに救済。
この小説の舞台は8年ほど前ですが、アメリカ投資銀行の圧倒的なパワーと
バブルの後遺症と官僚主義の邦銀の情けなさが対比して描かれているだけに、
その邦銀にアメリカの投資銀行が救済してもらうなどと誰が想像できただろうか?
金融ビジネスのスピードと危うさが証明された気がします。
今現在の経済ニュースと併せて読むととても興味深い本です。
国際金融の現場を垣間見ることができる快作
海外のシンジケート・ローン(国際協調融資)の現場を描いた快作だ。
主人公は元邦銀のメガバンクに勤務していたが、学閥に属していないことから冷遇され、現在は米国の巨大投資銀行に勤務する龍花と、その邦銀のロンドン支店勤務でエリートコースを歩む今西の二人だ。
龍花を通して描かれる巨大投資銀行の利益至上主義は吐き気がするくらいえげつない一方で、気持ちがいいくらいの成果主義一本やりで勝者と敗者が二分されるプロフェッショナルな世界だ。一方今西が勤務する邦銀は、日本的な内向き社会で、下のものは頭取・役員といった上の意向ばかりを伺っている。
この両者が同じ土俵で戦ったら、どちらが勝つかは明らかであろう。しかしながら主人公の二人はそれぞれの世界で自己の哲学に従って全力を尽くして自己の案件に取り組んでおり、その姿には心を打たれる。特に邦銀に勤務する今西が苦心してトルコの案件をまとめていく姿は、土俵は違うが金融に携わるものとして正直言って感動した。
もう一つ本書を読んで強烈に感じたのは最初にも述べた巨大投資銀行の血も涙もない利益至上主義だ。現在サブプライムローンが問題になっているが、このような問題が発生する土壌がこの体質に潜んでいることがよくわかった。
それにしても本書に描かれている邦銀の情けなさはどうだろう。最終的には今西にさえ愛想をつかされてしまうのだから救いようがない。邦銀に勤務する一員から見ると、小説として誇張された部分があるが、当たっている部分もかなりあるのも事実だ。この内向き体質を変えないと世界では戦えないということだろう。
著者は元銀行員ということで、国際金融の現場が実にリアルにわかりやすく描かれているので、専門用語を知らない人も楽しめるし、金融に携わっている人にはより一層面白い作品に仕上がっていると思う。
この文庫版と、元の単行本、副題が別だが内容は同一。
そもそも黒木亮氏の「トップレフト」は、2000年11月に単行本「トップレフト ウォール街の鷲を撃て」で祥伝社から発売された。その後祥伝社文庫として「トップレフト 都銀vs米国投資銀行」として発売された。勿論内容は全く同じ。無茶苦茶である。私は祥伝社文庫の「都銀・・・」を図書館で借りた。アマゾンレビューも書いた。他の同系統をと思って、祥伝社の単行本の「ウォール街の鷲を撃て」を借りた。何故なら文庫はロンドン・シティーを舞台の物語だ。一方で単行本は「ウォール街・・・」とある。当然ニューヨークのウォール街とミッドタウンのパークアベニューの物語で別の話と思った。それが全く同じ内容とは・・・。こんなことがあってもいいものなのか。単行本を出し、次いで文庫本を出す際に名前を変えて出すなんて、いいのか?アマゾンでも「トップレフト 都銀vs・・」と「トップレフト ウォール街・・」を合わせて買う、なんて掲示してある。同じ内容なのに・・・。トラブルになるだろう。
懐かしいユーロ金融市場での日本人二人。
懐かしい思いが一杯のユーロクレジット市場。シティを中心として欧州各都市を舞台にした、典型的なエリートの都銀ロンドン支店次長と、屈折した米投資銀行欧州シ・ローン組成担当部長の邦人金融マンの活動のお話。これはユーロ市場の国際金融基本読本として読むべきであろう。斯様な本を書ける作家はそう多くはないので、黒木亮氏は貴重であり期待している。一方でなんと多くの金融専門用語を総花的に盛り込んだ説明とお話にしたことか。まあ現実に即したものではあり、自分としてはとても懐かしく、ノーザンライン、シティ、トルコ出張、マンデイト獲得合戦、インビテーションの長いテレックス、スプレッドと各種手数料のスイートナーで魅力のトルコ、ギリシャ案件、本書はそういう意味ではかなり臨場感はあった。但し小説としては、掘り下げ、展開、迫力的に難あり、やはりこれは国際金融読本として価値がある。昔は大手都銀も主幹事を取りたく意気込んでいた時代ながら、所詮はその実力は大したことはなく自己満足でいい気になっていた時代である。中心の二人の思いはよく理解できる。
ビジネス小説のはしり,わかりやすいです.
黒木さんといえば,巨大投資銀行(バルジブラ)が有名ですが,その
下書きともいうべき本ではないかと思います.
金融用語としては,巨大投資銀行の方が難しいのでそちらが読めれば
敷居は低いと思います.
小説としてのプロットは少し弱いと感じるのは巨大投資銀行と
比較してのお話で,電車の中で読む本としては充分です.
出版社が2社から出ているみたいなのでわたしの様に同じ本を読まないように
気をつけてください.
充分読み応えがありますので,楽しいと思います.
国際金融経済のお勉強には
スケールが大きいということでは、確かにその通りでしょう。
内容の精緻さも、金融に素人の私にも、ものすごさがわかります。
でも、登場人物がステレオタイプと思えました。
今西の心も龍花の心も、傷を負いつつ、それを乗り越えていくというものでしょうが、
どうも、よくあるパターンにはまっているようですし、龍花がディシュリに毒づくところの
表現は、正直効果としてはどうかと思いました。
ということで、金融のお勉強にはなりました。でも小説としては楽しめなかったです。
最後の伊吹の正体の種明かしは、少々期待はずれでした。
お勉強にはなったので星4つです。
国際金融の舞台が垣間見れました
欧州統合前、日本の金融界も再編前だった頃の金融の舞台がダイナミックに描かれています。
日本の金融機関の実情と外部評価、国際社会で奮闘する邦銀社員のジレンマ、米国系、欧州系の金融機関の個性など、実際に筆者が体感したであろうエッセンスが凝縮されたストーリーでした。
金融が門外漢の私には少々読みづらかったですが、巨額の金を動かす案件に関わる人間の思惑や各国の事情やリスク、準拠法や宗教観など、日本でたまに目にするだけでは全体像がよく分からなかったことも、この小説を読むことでだんだんと輪郭がはっきりしてきました。
世界を舞台に戦う二人の日本人の心情が読者にじわじわと迫り、時々一緒になって腹立たしくも悲しくもなり、結末も切なく描かれて、経済が1人の人間の行動によって大きく動いていくことを実感させられました。果たして日本の金融界は変わったのでしょうか。現実を省みるいい小説でした。
IBの魅力とは
邦銀から外資系投資銀行へと転職し、マネーゲームに魅せられた龍花と、邦銀において、日本のため、銀行のためにと身を粉にして働く今西。この二人が国際金融ビジネスを舞台に巨大融資案件のディールを獲得を目指し争う。そこに銀行間のTOBなども絡むビジネス小説です。
金融の知識があれば、確かに理解も早いでしょうが、ある程度の知識があれば分かりやすい解説もあるので流れに逆らわず国際金融ビジネスの緊迫感を感じることが出来ると思います。(想像ですが)
本書は、今後のキャリアを考えるうえで金融を考えても良いかなというのと、昨今新聞紙上でも多いですが、大型投資案件においては協調融資(シンジケートローン)が多用されていることもあり、このシ・ローンを舞台にした小説に興味を持ったため読んでみました。
金融用語はそれほど違和感なく読めましたし、金融ビジネスの一端を見ながら、邦銀の硬直した組織体制の中で葛藤する今西や、マネーゲームに魅せられつつも「幸せ」について考える龍花の心理描写など面白く読めました。
金融業界で働いている人、及びこれから働きたいと思っている方にはお勧めです。
壮大!
黒木さんの作品はいつも舞台が世界だから、壮大な気持ちにさせてくれます。なんか自分が一流インベストバンカーにでもなった気分。
世界金融経済のことも勉強できるので、面白くてためになる、まさに一粒で二度美味しい作品になっています。
すごい
国際金融業務を知らなくても、十分楽しめる。それに、邦銀の支店の雰囲気の一面と業務の裏事情の一面を見事に表現している。ぐっと惹かれる内容でした。
