母なる夜 (白水Uブックス (56))

  • [著]カート・ヴォネガット

カテゴリ:
新書 (298頁)
ISBN:
4560070563
発売元:
白水社 (1984/01)
価格:
¥ 998 (税込)
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93,452 位
評価: 5.0
2007
11/09
Fri

ヴォネガットの作品の中でしみじみ度No.1

94.1% (16 / 17)
[No.2] posted by ともぱぱ

約四半世紀ぶりに池澤夏樹氏訳の本作品を読み返したが、ヴォネガットの「タイタンの妖女」から「スローターハウス5」までの5冊は20世紀文学の金字塔だと思う。その5冊の中で唯一SF色が一切なく、最初に出版したのが早川書房ではなく白水社だったのが本作。アメリカ人なのに第2次世界大戦中のドイツに残り、対米宣伝放送を担当しつつ、米軍への暗号をその中に織り込むというスパイ活動をしたハワード・W・キャンベル・ジュニアという男の物語。戦後ニューヨークで実名で暮らしながらも、外形上はナチス・ドイツに協力した過去の罪の意識、反米活動を行った自分はドイツ人の妻や親族の死後もなお米国で生き延びてよいのかという悔恨、そして実はアメリカに協力していたことをほとんど誰も知らないという孤独を抱えて悩み、やがて同じように自分の国にフィットしない、あるいは自分の立ち位置に疑問を持った脇役達をまきこんだ騒動の果てに、自らイスラエル当局に出頭して裁判を待つ日までを、時間を前後させつつハワードの告白形式で描く。優秀な潜入スパイの内面の苦悩を扱った本として屈指の作品ではなかろうか。そして上記5冊の中では、最もしみじみとした読後感を抱く作品である。古代アッシリアの王「ティグラート・ピルセル3世」の名を冠した冒頭の章から感傷的な気分に包まれる。ハワードはアッシリアの時代から現代までに多くの廃墟や神殿が砂ぼこりにうずめられたことに思いをはせるが、同じだけの時間がこれから経過しても砂ぼこりの中から必ずや発見されるだろう、いやそもそも砂ぼこりをかぶることなく読まれ続けられるだろう偉大な文学として、本書をお薦めする。

2002
08/03
Sat

『母なる夜の』魅力

84.2% (16 / 19)
[No.1] posted by 江面 剛

この作品も、ヴォネガットの作品に最もよくみられる一人称の回想形式である。歴史に翻弄される一人の男の人生を通して、分裂症的な人間達と世界を描く。悲劇的で怒りと悲しみに満ちた作品でありながら後味の悪さを感じさせないのは、ウィットに富む筆致と愛と冷静さを兼ね備えた人間観のおかげであろう。


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