- [著]アーネ リンドクウィスト
- [著]ヤン ウェステル
- [原著]Arne Lindquist
- [原著]Jan Wester
- [翻訳]川上 邦夫
- カテゴリ:
- 単行本(ソフトカバー) (212頁)
- ISBN:
- 4794802919
- 発売元:
- 新評論 (1997/05)
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教育実習前に読むべき1冊
昔、教育実習に行くためだけに教員資格を取りました。
学校というものを体験してみて気づいたのは、先生たちは生徒に考えさせる教育を理想としているということであり、よく言われるような詰め込み式、暗記重視の教育など目指していないという事でした。
ところが、その自覚を持って実習に臨まなかった私は、生徒の自発的な考えを引き出すのに大層苦労した記憶があります。
さて、そこでこの本!
この本を読んでから実習に臨めば全く違った社会科の授業ができたのではないか?
生徒の眼の輝きが違ったのではなかろうか?
試してみたかった!
これから実習を行う方には特にお薦めです。
日本の教科書と比較して
自分が中学校教育の経験を通して思うことは、日本の教科書は知識を広さをカバーするにはバランスはよいほうだと思う。
しかし、そのかわりどうしても紙幅の関係もあり個々の具体性がないように思われる。当時自分の理解力の乏しさもあってか、選挙、行政の仕組みをなど教えてもらうわけだが、その当時は全く関心を示さなかった。やはり、実際すぐ選挙するわけでもないのに説明書みたいなマニュアルでは正直辟易してしまったし、抽象すぎて身近に考えることはできなかった。ただ、大人になってから中学校の公民を読んでみて目から鱗だったりもする。。
あと、こういった教育が近年日本起きている若者の選挙離れ、無計画な消費者金融問題、突発的な少年犯罪の一面を表しているようにも感じたし、政府は、教養と名目に表面的な教育を推進し、肝心なものが抜けている思えた。裏を返せば、人々に思考停止を勧め、関心を持たなくよう教育されていたような気もする。ちょっと勘ぐり過ぎかもしれないが。
ともあれ互いに一長一短あるわけだから、併用してみると効果はよりあると思う。特にティーンの人たちには損はないのでお勧め。
暗記ではなく、考えさせる社会科
日本の大人たちにとって、今なぜ、スウェーデンの中学教科書が?! 確かに、わたしたちは社会に出てようやく自分の無知を恥じ、知識欲に目覚め、 あの時もっと勉強していればよかったなどと、学生時代を振り返ったりします。特に社会科は、答案用紙を埋めるため、一夜漬けの丸暗記を繰り返していたりして。。。
訳者は、まえがきで賢明にも本教科書の特長を指摘されており、それがあまりに的確なので引用しておくことにします。
1)実社会への手引きになっている、2)社会的存在としての人間にさまざまな角度から光を当てている、3)積極的な姿勢が貫かれている、4)子どもたちが自分自身の意見をもつことを徹底して奨励している、5)社会は自分たちの手で変革できることを教えている、6)文章が簡潔かつ明晰で、良く練られリズムがある。
また解説として、こういった教科書の背景となっているスウェーデンの社会や教育制度について丁寧な情報を加え、その実際の使われ方をレポートしてもくれています。
読み終わって、この社会科の教科書の中には、暗記で解答するような課題など一つもありませんでした。私たち自身が社会の中で生きているのだということを自覚し、その社会は複雑でいろいろな問題や考え方があって決して一筋縄ではいかないけれども、それをより良いものにしていくのは私たち自身に掛かっている、ということを学ぶためのものだと思いました。それこそ、私たちが一夜漬けの代わりに本当に必要としていたはずの、社会に密着した生きた視点だったのではないでしょうか。
皇太子さまがお読みになったことで有名になったという「子ども」という詩についても、そこに感動を誘う形で真理が描かれている、という理由だけで掲載されているのではありません。その真理がいかに理想的なもので美しいものであっても、それを実行することが困難な人たちがいたり状況があったりするという、決して綺麗事だけでは済まない痛切な現実から目を背けないようになっています。
社会の仕組みについて目的意識を持ってもう一度勉強しなおす機会が欲しい、そんな日本の大人たちにとっても文字通り最適の教科書ではないでしょうか。
社会と人との交流法
基本的な社会の仕組みを、現実の事例に即して、読者に問題提起します。たとえば、コンミューンの説明の後で、実際に住人の間でおきたトラブルの事例が出てきて、皆さんならどのように、解決しますか?といった風です。また、夜ガムラスタン(歌舞伎町と思えば良いでしょうか、もっとおとなしい安全な町ですが)で呑んで、帰りに暴漢にあいました。どうすればいいでしょう?といった風です。現実の、自分の周りでおきている出来事が、社会の仕組みや人間同士の約束事に重要な関係があることを、理解できます。開かれた社会主義のスウェーデンならではでしょうか。日本の学校教育がこのレベルまで行くのに、何年かかるのでしょうね。
未来を作る子供たちに託したいこと
社会と訳されているけれど、ここでいう社会は、
もうひとつ小さい単位である「コミュニティ」に
人がコミットしていることが前提となっていると思う。
自分たちが自立的にルールを定めて、
コミュニティや社会を形成してきていること、
それを保持していくためにどんな努力が必要かと言うこと、
経済や障碍、年をとることなど多岐にわたる内容で
そうした中で人はどのように生きていくのかを説いている。
未来を作る子供たちに、本当に託したいこととは何だろう。
それは、人生は価値がありすばらしいものだと言うことであり、
我々は、すべての人の人生を守るために、
迷いながら議論しながら、社会を作ってきたと言うことだ。
そして、そうした歴史を把握し改良を重ねることの出来る
人を育てることだ。
ルールを守れ!でもなく、コレが正しい!でもない。
これまではこう考えて来た。君たちはどう思うか?である。
子供にも大人にもお勧めしたい。
そしてぜひ、日本版「あなた自身の社会」を出せるように
成熟した社会を作りたいものだと思う。
子どものまま大人にならないために
中学生の教科書としてよりもスウェーデンの社会体制をまとめた小冊子のようだ。これだけの内容を子ども達は義務教育で習って大人になる。日本では、自分が出産する時、犯罪を犯した時、失業した時、障害を持った時にどのような状況になるか、子どもを養うのに必要な金額などを教えているだろうか。観念的な内容でなく、法律で定められた権利と義務、そして社会の現状が統計的な事実として提示される。様々な社会的な問題に出会ったときに法的なこれだけの知識があれば社会的援助がどこで受けられるかも迷わないし、現実に立ち向かう勇気もわく。社会のネガティブな側面を語っているが、夢を壊すのではなく、そのような状況をどのように克服して行くのか、に焦点を当てている本だと思う。
内容はとてもすばらしいが、日本の現実とは異なる物なので星四つとした。日本の中学生のためにも日本の法律、制度にそったこのような本がぜひ欲しいものだ。
あなた自身の社会ースウェーデンの中学教科書
皇太子様が読まれた詩に感動し、是非読みたくなって購入した。 字も大きめで読みやすかった。 日本以外の社会のしくみがわかっておもしろかった。
息子(中学生)を含め、みんなで詩について話し合う時間ができ、思ってもみない良い時間がもてた。
もっとこうした詩がたくさんのっていると思ったが、そうではなかったのがちょっと残念。
きっかけは皇太子様の朗読でした。
タイトルに書いたように「皇太子さまの朗読」がきっかけになり、本書の帯に、そのことが書かれていたので手にしました。
もしかしたら、今年、本書を手にされた方は同じ理由からかもしれません。
本書は、スウェーデンの中学生の教科書で、
詩「子ども」は、社会保障を習う章の中で、考える課題として取り上げられていました。
本書を読んで、その書いてある内容等を、日本の中学社会科のそれと比べると、大きな差を感じました。
それは「習うべきモノ」の差というよりも、「社会の根本的な違い」だと思います。
いろいろな理由があると思いますが、
私は「作り上げた民主主義社会」と「与えられた民主主義社会」、その差ではないか、と思います。
その基本的な姿勢の差が、教科書(教育)にも出てきているのではないか、と考えます。
本書の帯に「一人立ちをし始めた年代の子ども達への最良の助言」とありました。
日本の教科書に「伝える」ことは記載されていても、
「助言する」という考え方はあるでしょうか?
大人を含めて「読み考えること」の大切さを教えてくれる本のように感じます。
素直に考えさせられる本
皇太子様が読んだ「子供」という詩が収録されています。
前半は聞いていて、心に痛い言葉が続きます。
「批判ばかりされた子どもは 非難することをおぼえる
殴られて大きくなった子どもは 力にたよることをおぼえる
笑いものにされた子どもは ものを言わずにいることをおぼえる
皮肉にさらされた子どもは 鈍い良心のもちぬしとなる」
そして、後半でとても暖かい気持ちになり、
「しかし 激励をうけた子どもは 自信をおぼえる
寛容にであった子どもは 忍耐をおぼえる
賞賛を受けた子どもは 評価することをおぼえる
フェアプレーを経験した子どもは 公正をおぼえる
友情を知る子どもは 親切をおぼえる
安心を経験した子どもは 信頼をおぼえる」
最後の一行で、素直に納得してしまいました。
「可愛がられ抱きしめられた 子どもは
世界中の愛情を 感じることを おぼえる」
「社会科」の考え方が日本とスウェーデンでは違うのだなぁと思いました。
社会のルールや仕組みについて単純に暗記させるのではなく、一人一人が自分の価値観や考える軸を持てる様に教育する姿勢は、私たちも見習うところが多いと思います。
今の社会では、以前は当たり前であった「言葉にしなくても理解してもらえる」という無言のコミュニケーションが成り立ちづらくなっています。
子供に対しても「言わなくても分かるだろう」という前提を置かずに、この教科書のような教材を使って生徒一人一人の社会での位置づけや、どのように社会の一員となるべきか、を教育することが必要なのではないでしょうか。
世界が変わる一冊になりそうです・・・
ほぼ全教育を公的に供給するスウェーデン、「知識資本」を育てることに心血を注ぎ、世界一のIT国家に
のし上がった最大の福祉国家の中学校の社会の教科書、ということで興味を持つ人も多いでしょう。
中学生の子の家庭教師用の教材として購入してみました。
この教科書は法律と犯罪、人間関係、経済、コミューン(自治体)、社会保障というセクターに分かれています。
この本の最大の特徴は「あなた」という視点にたって書かれていることだと思います。
法律の話での、あなたは○○歳になったら○○が出来ます、という紹介をするのもそうですし、経済のセクターは
実際の子ども達の経済(お小遣い)の話から入ります。また、「課題」として「あなたはどう考えますか?」という
問題提起が非常に多く入っています。実際の授業では毎授業ディベートが行なわれるのでしょう。
「あなたと他の人々」というセクターがあるのですからうらやましいです。
また、具体的な犯罪→裁判の流れを追ってみたり、麻薬の話、性の話など、全て生徒に身近な、具体的なところから
入って、その後に説明をしたり、議論をさせたりする、という流れなので、とてもわかりやすく、問題意識を持たされます。
中学生へのアンケート結果や、色々な統計の結果などもたくさん載せられ、スウェーデンの社会福祉の現状を
知りたい方にもお勧めだと思います。特に、大きな裁量権がある「コミューン」の仕組みについて一章割いて
くれていますし、例えばスウェーデンの犯罪者ケアーに関する市民の実名の意見を掲載したところでは、
ある男性が「犯罪者についてあれこれ言うのは全くスウェーデン的」と言っていたり、別の人は
具体的な「スウェーデン的」提案をしていたりと、実際スウェーデンの人が社会福祉国家をどう思っているのか、
どうしてその体制をとっているのか、具体的に見ることができます。
私自身、いろいろ考えさせられそうです。
教育や福祉に興味がある人、スウェーデンに興味がある人、教師・親である人など、どんな人にもお勧めです。
いろいろなところで絶賛されているのも当然です。
