- [著]中野 雅至
- カテゴリ:
- 新書 (256頁)
- ISBN:
- 4797340479
- 発売元:
- ソフトバンク クリエイティブ (2007/06/16)
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- ¥ 735 (税込)
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努力のベクトル
自分のまわりには、国民年金すら払うことが出来ない日給¥7〜8,000
の日雇い派遣で働く人や、社会的に必要な職業なのに、いつまで
経っても手取り十数万で、結婚どころか自分の生活もカツカツな
介護ヘルパーや保育士がいる一方で、大して汗を掻いていそうに
ないのに年収数千万円以上稼ぐ人たちがいる(いた)。
筆者は、日本人は一部の例外を除いて、基本的にはしっかり働く
民族であり、両者の間に努力の差はあまり無いとしている。ワーキング
プアやニートになってしまった人、子供の頃から頑張って一流大学
を入学・卒業したにもかかわらず、見合ったリターンを得られてい
ない人も、決して自ら望んでこのような生活になったのではなく、
その努力が報われないままモチベーションが低下し、今に至っている
旨を説いている。
筆者によれば、その両者の違いは『努力の方法の違い』『「見た目が
十割」であることをフルに活用した自分自身を売り込む能力』である
と言い、魑魅魍魎が跳梁跋扈する世の中を生き抜くヒントを自らの
体験を交えて説いている。
詳細は本書を読んで貰いたいのだが、『無駄な努力にリソースを費
やさない』『努力が継続できそうな自分の好きな事をする』『潮目
を見て行動に移す実行力』がカギであり、その内容には大きく頷け
るものがあった。
また、100%ではないにせよここ20年…いや、10年で、もはや『謙虚
は美徳』という日本人独特の価値観はかなり薄くなってしまったと
感じているのは私だけではないはず。それに気付くことが出来ない
限り、努力が報われるのは難しいのかも知れない。
報われる努力の仕方
アピール力に優れた人間が評価されるのがポストバブル期だと著者は言う。
他の著書にもある通り、「高学歴ならば安泰」ということにも懐疑的。
出世の第1条件は「疲れないこと」、そして「声のデカさとアピール力」が
大事だという。
たとえば、文科系の官僚が他人の専門知識を横取りして自分の手柄にする話。
専門知識が必要とされる分析・調査などを技術官僚にやらせた上で、文科系の
官僚は技術系の官僚から話を聞く。そしてその話を自分なりに噛み砕いて役所
の幹部や政治家に上手く説明すると。
また、パワーポイントを上手くつくれる技術よりも、人が作ったパワーポイ
ントをわかりやすく説明する(自分の手柄にする)能力が重要だという。
なんだが嫌な感じもするが、「ただ頑張るだけではだめ。効果のある努力を」
という意見には共感できる。
視点が不充分
格差社会と銘打っているが、本書は筆者のように比較的安定な環境・立場を享受しつづけてきた中高年層の視点から見るもので、世代間格差や若年勤労者の抱える問題については見事に議論を避けている。また、私大出身の筆者が旧帝大出身者中心の官界で冷遇されたことは容易に想像できるが、現在であればそのような業種を選んだ自己責任で斬って捨てられることでしかない。その点でページの多くを東大出身者や東大生への恨みつらみに割き、挙げ句に葬式の想像描写まで加えていることは本書を手に取る多くの若い読者には無意味であろう。筆者のように私大文学部から市役所、キャリア官僚、税金で留学、公立大学教員という経歴をたどれたこと自体が多くの若年層にとってはもはやありえない。格差社会の詳しい現状分析を期待する読者には適当でない可能性が高く、むしろサラリーマン向けの処世術指南といった内容である。
次は市長を目指す
「ボンボン高学歴者」、「威張りーマン」、「ビルメン老人」など、命名の仕方に、学者さんらしくからぬ、関西風味付けが施される。ちょっとドギツクもあるが印象的で、内容理解に随分と役立っている。言い換えれば、意識的に庶民的装いを施してある。好みが分かれるところであろう。
さらに、「敗者」にはあくまで親切で暖かい眼差し、「勝者」には冷静な観察眼をもって語ることを基本としているが、随所でその「行き過ぎを是正するブレーキ痕」がみられるなど、とにかくバランスのとり方が抜群である。
また、内容は、著者の実際の経験や統計資料などにも裏打ちされた、説得力のあるものとなっているし、最後には政策提言も披露しており、「門前書」としては十分な読み応えがある。
ところで、著者のcareer pathの先には、地方公共団体の首長すなわち知事や市長の職責が見えているのではないだろうか。
良くある格差社会ものとは違う
統計データを元にする従来の格差本とは違い
地に足がついた論議に共感。
欧米や中国とも違った日本の労働環境、経営者と労働者が地続き
であるという前提のもと、どのように格差の波を乗り切っていくべきか
を最後の結論は本当良くあるものだけど、そこにたどり着くまでの過程で
納得できるものに代わっているのが面白い。
見た目が10割社会
会社でも、勤務態度は結構ルーズで、大した成果も出していないくせに、
人一倍声が大きく、シャベリだけは上手い、ある意味、一芸に秀でたヤツがいる。
逆に、コツコツと生真面目に働いて、それなりの成果を出してはいるものの、
声に張りがなく、地味で、アピールが下手な人もいる。
努力に度合いがあるとして、この両者の努力の度合いに対するパフォーマンスを考えると、
シャベリの上手いヤツのほうが、自分の努力に対するリターンを易々と得ているように思える。
本書の著者も、ポストバブルは見た目が10割社会で、
ひたむきな努力をしても報われない「努力プア」とPR力に秀でた「アピールリッチ」が生まれたといいます。
こんな格差が生まれた現状を、著者の独特の感覚で説き、この世知辛い状況への賢い対処法までも指南している。
読んでみると、反発が生まれる部分もあるにはあるけれども、それ以上に役立つ情報が多い。
センセーショナルな主張がたくさん、でも空論ではない!
「ワーキングプア」と呼ばれる低所得者のみならず、
これまでもてはやされてきた高学歴者たちでさえ報われないと説く著者。
報われるのは、見た目に優れた人、つまり自己PR力に優れた人であり、
一方で、言われたことをコツコツとこなす人は報われない傾向にある。
古くから美徳とされてきた縁の下の力持ちは、いわば、“損な役回り”というわけだ。
見た目が10割という実情の下、著者は、
「会社のために働くという考えは、捨てたほうがいい」
「企業を信じてはいけない」
「企業を利用するようにすべきだ」
「会社のお乳=社乳をしゃぶり尽くし、吸い尽くしてから辞めるべき」
など、自らの経験則も踏まえたうえで、元キャリア官僚にしてはセンセーショナルな主張を繰り返す。
これが単なる空論ではないところがミソで、また具体的方法論も指南しているのでタメにもなる。
一度、読んでみることをお勧めしたい一冊だ。
がんばり方のコツとは?
「がんばる」って何かを考えさせられました。
格差社会が叫ばれる今、お金持ちとそうでない人との間に、「がんばり度合い」の差はあるのでしょうか?
著者は「ない」と言い切ります。
勝ち組も負け組も努力の差にそう大きな差はない、と。
ただ、そこにはある一定のコツがあるようです。
本書は、がんばり方のコツについて、明快に解説しています。
今どきの努力には「ツボ」がある!
とは言い得て妙です。
予想した以上に……
失礼ながら、事前に予想した以上にオモシロかった。
元キャリア官僚らしいそつが無い分析力と、半ばボヤキのような語り口のギャップが頼もしくさえある。
具体的なアドバイスにも触れているが、こちらはかなり偏った物言いがあるものの、
著者ならではの経験談が下敷きとなっているため、説得力はある。
いずれにせよ、一度、読んでみる価値は大いにある。
実益に即したアドバイスも
声の大きいアピール上手が報われる一方、
目の前にある仕事を地道に正直にコツコツとこなす真面目な人は報われない。
それがポストバブルの実像だったと著者は分析します。
また、有名校出身という高学歴や、有名企業勤務という企業ブランドなど、
これまでは人格を判断する材料にさえなってきた要素は、
下流へ転落しないための最低限の保障くらいの役割でしかなくなったとも説いています。
それでは、われわれはどのように努力すればいいのか?
この問いに対して、著者はキャリア官僚時代の生々しい実体験を交えながら、
実態に即したアドバイスを促しています。
これまで、なんとなく自分の頑張りは正当に評価されていないな、とか、
もう少し自分を伸ばせられれば、などとちょっとでも思ったことのある人は、
今の社会環境全体をいったん俯瞰した上で、その中で生きる自分の姿をとらえる、
いいきっかけになる良書だと思います。
