- [著]ビョルン・ロンボルグ
- [翻訳]山形 浩生
- カテゴリ:
- 単行本 (320頁)
- ISBN:
- 4797347236
- 発売元:
- ソフトバンククリエイティブ (2008/06/28)
- 価格:
- ¥ 2,100 (税込)
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広く手に取っていただきたい本です。
温暖化をめぐる議論の中で、あまり巷では言われない立場を「シンプルに、かつ分かりやすく」語ってくれる本です。
この問題を考えてみるのに「テレビで言っていること」が大変一方的であることを教えてくれます。そしてまたそれは「反論の余地のない真実」なんかではないのです。
出来るだけたくさんの人たちに手にとってみていただきたいと思います。幸い「訳」もこなれていて一般の方々たちにも読みやすいものになっていますし、専門知識を要求するところもほとんどありません。
本書をきっかけに、日本でももっと冷静な議論が広がればいのにな、と。
科学的に正しいことが何かがわかる
宗教論争のようになりつつある温暖化問題に関して、冷静な議論をしている良書です。日本の一部の論拠の乏しい温暖化懐疑論とは異なり、人為的な温暖化は認めた上で、その不確実性の大きさを述べています。そして、人類が有するリソースが有限である中で、どのように対策をとるべきかを論じています。温暖化対策が不要と主張しているわけではありません。
アル・ゴアはもちろんのこと、スターン報告についても真っ当な批判をしています。私たちは、アル・ゴアやスターンのような科学の顔をした政治的な意図や単なる個人的な感情論を読み取って、しっかりした科学を理解し正しい判断をしなければならないでしょう。本書はその助けにきっとなります。福田首相はじめ多くの政治家にも是非読んでもらいたいものです。
ただ、著者は温暖化の専門家とまでは言えないためでしょうが、具体的な温暖化対策の提案は弱い感は否めない点は少し残念です。
環境版「反」聖戦論
最近の温暖化論者の主張は、戦前の日本の軍国主義者に似てきているのではないかという気がしてなりません。すなわち、「鬼畜米英」ならぬ「鬼畜温暖化」「鬼畜CO2」と叫んでCO2削減のための聖戦への参加を強要し、聖戦に疑問を呈する者は、「売国奴」ならぬ「反環境主義者」として袋だたきにされる。目指すは「大東亜共栄圏」ならぬ「京都議定書プロトコル」の確立であり、それを達成するまでは、経済発展だの利便性だのといった甘ったれたことはいうべきではない。「欲しがりません勝つまでは」というわけです。
筆者のビョルン・ロンボルグは、このような「聖戦思想」に対して3つの問題提起をしています。第1は、温暖化は、(災厄をもたらす可能性はあるとしても)、直ちにストップを掛けなければならないほど大変な災厄をもたらすの?本当に「鬼畜温暖化」なの?ということ。第2は、「CO2」に対する聖戦で、本当に世界を救うことはできるの?例えば、アル・ゴアは、北極海でおぼれかかっているシロクマを救え!と叫んでいるけれど、CO2を削減すれば本当にシロクマは救えるの?ということ。そして、第3の、最も基本的な事柄は、世の中を「聖戦思想」一色に塗り固めてしまう前に、もっと議論をし、様々な政策の利害得失を考えてみる必要があるのではないの?ということです。
何を今更と思う前に、本書を読んでみて下さい。費用対効果や、何と何がトレードオフになっているかを考えず、むやみにCO2との戦いに突入していこうとするのは、アメリカとの勝ち目のない戦いに突入してしまった日本の愚を繰り返すことになるのではないか、そのことをもう一度考えさせてくれる著作だと思います。
冷静にCO2削減のCost-Benefitを論じた本
CO2削減をする場合のCostは莫大であるのにBenefitはほんのわずかであることが数学的に良く説明されています。
それだけのコストをかけるのならば、他にもっと実効の上がる方法や対象があることも良く説明されています。冷静な議論の土台を提供してくれます。
良い本だと思うのですが、惜しいのは、温暖化の主因がCO2だとの前提で論を進めていることです。
現在の温暖化には自然変動(小氷河期からの回復過程)が大きな役割を果たしており、CO2による温暖化はあるとしてもごく小さな割合になると考えられます。
ですから、本当のCost-Benefitはこの本に書かれているよりも更に悪いものになると考えられます。
その点をよく理解した上でこの本を読めば、大変に参考になる本だと思います。
「正しく知る地球温暖化」(赤祖父俊一)と「地球温暖化論のウソとワナ」(伊藤公紀、渡辺正)を併せて読むことをお薦めします。
理想主義と現実主義
論点を整理してみました。ご参考にどうぞ。
前提
地球が温暖化していること、その原因がCO2であることには、まだ疑問が残りますが、
ロンボルグはとりあえず正しいと仮定し議論を進めています。
論点(1)
温暖化はどの程度問題なのか。現在の議論は、温暖化のための、暑さによる死者の増加は
研究されているが、寒くなくなることによる死者の減少は追求されていない。等
温暖化のメリットデメリットが詳しく分析されていないのではないか。
論点(2)
温暖化は、現在人間が直面している問題の中でどのように位置づけられるものか。
貧困対策、紛争対策などのほうが、はるかに現実的で重要ではないか。
論点(3)
CO2の削減は、温暖化の対策として効率的なのだろうか。
カトリーナ等の「ハリケーンの被害」を防ぐには、CO2の削減が費用に応じた効果が
あるのだろうか。その他の温暖化の「被害」に対する対策も同様で費用対効果の観点から
は非効率的ではないだろうか。
アル・ゴア氏は、人類が連帯し大きな問題に立ち向かうことの素晴しさを訴える理想主義者。
それに対しロンボルグ氏は問題の重要性、その順位付け、対策の効率を考える現実主義者。
理想主義者の言う事は心に響くものがあるが、諸問題に分配できる資金は有限。
冷静に考えれば、答えは見えてくると思う。
CO2と地球温暖化の問題を豊富なデータで分析した本
今話題となっているCO2と地球温暖化との関係を述べた本です。
同様の内容で有名な本としてアル・ゴア氏の「不都合な真実」がありあますが、
見事な批判の書となっています。
CO2は本当に地球温暖化の原因なのか?
地球が温暖化すると本当にマズイことになるのか?過去はどうだったのか?
京都議定書は意味のある取り決めなのか?
豊富なデータを元に、これらの内容を一つ一つ検証していきます。
余り知性を感じられないタイトルが残念ですが、実に知的な本で、
こなれた訳もあり楽しめました。特に「地球温暖化対策が悪い訳ではない」
という姿勢が、単なる批判本とは一線を画しています。全体的に楽観的な
トーンがちょっと気になりますが、地球温暖化に関心がある人には必読だと
思います。
経済学的に真っ当な主張
この本を長方形で少し縦長です。ゴアの『不都合な真実』が横長だったのに対抗しているのでしょうか?
内容は『環境危機をあおってはいかない』(文藝春秋)の抜粋みたいな感じです。『環境危機〜』は事典のような厚い本なので、『環境危機〜』の地球温暖化バージョンが出ることは嬉しいです。でも文庫サイズや新書サイズの方が良かったのですけど・・・。
訳者の翻訳&解説は定評があり、前作『環境危機〜』も高く評価されています。だから、この本を読んで興味を持たれた方は『環境危機〜』も読むことをオススメします。
ロンボルグはゴアに対しては真っ向から反対してますが、同じノーベル平和賞受賞のIPCCには反対していません。地球温暖化の「二酸化炭素犯人説」を否定していません。その点が、同じ訳者の『地球温暖化は止まらない』(東洋経済新報社)デニス・T・エイヴァリー&S・フレッド・シンガー著の主張と違うところです。
けれどIPCCの予測が正しいと仮定しても、二酸化炭素「削減対策」は地球温暖化を「止める効果がない」ということが、ロンボルグの主張です。
また地球温暖化問題は、人類が抱える問題の中では「緊急性がない」ということです。
だから効果のない対策に、巨額の投資をするのではなく、もっと緊急性が高く、効果のハッキリした問題にお金を投資すべきだという経済学的に真っ当な主張です。
経済学的な主張が嫌いな人は、『環境問題の本質』 (NTT出版)クロード・アレグレ著(林昌宏・訳)や『異議有り! 生命・環境倫理学』(ナカニシヤ書店)岡本裕一朗・著をオススメします。遠回りになると思いますが、環境「原理主義者」の弊害が理解できて、ロンボルグの凄さが理解できると思います。
データとその集計方法の脆弱性に迫る本
ごくごく真面目なまっとうな本だと思いました。数字やパーセンテージの羅列なので、読んでいて面白い類のものではないですが、かみくだかれた訳文に助けられて一気に読みました。報道に携わる人たちは、少なくともこの本に示されたリファレンスのいくつかにきちんと当たった上で、ある程度の検証をして情報を流してくれているのだろうか?と、はなはだ疑問です。本の主眼は、ゴア氏個人を揶揄することでも、ロンボルグ氏の主張を押し付けることでもなく、「もっとまともな議論をしようよ」というものです(ゴア氏への異論は相当量唱えてますが)。やや残念に思われたのは、繰り返しが多かったことと、「これについてはまた後で」という言葉が多かったこと。読者がしっかり論理を追うためには、「これについては○ページでも後述する」と明記してもらわないと、後述項目が多すぎて、煙に巻かれてしまいそうでした。しかしそれを差し引いても、現在行われている様々な議論が、ずいぶん乱暴なデータ解釈の上に成り立っている危うさを感じさせてくれます。ロンボルグ氏は、新たな技術開発で温暖化に対応しようと主張しているので、その意味ではゴア氏と大同小異なのでは、という気がしました。ただ、今後の政策を真面目に検討しようという人は、是非本書のリファレンスを自身で確認する必要があるのではないでしょうか? 無駄遣いバッシングがこれだけ激しい昨今、環境対策についても無駄遣いは検証されるべきかと思います。ロンボルグ氏の見方がすべて正しいとも思わないけれど、少なくとも、今現在の温暖化政策では、適切なアセスメントは行われていない(まともな対話はできていない)のは確かのように感じました。まずは日本国内で、排出量取引の是否について徹底検討してもらいたいものです。
