- [著]リチャード・ブックステーバー
- [翻訳]遠藤 真美
- カテゴリ:
- 単行本 (447頁)
- ISBN:
- 4822246671
- 発売元:
- 日経BP社 (2008/05/22)
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必然なんて書いてない
ザクッと言えば、現在の金融システムが如何に危ないかとここ数年の投資銀行内部で行われていた事柄の紹介と言った所です。実名がかなり出ています。黒木亮の巨大投資銀行の内容ともだぶっているところがあります。
株式や債権の投資を行っている人や金融関係の人にとっては、とても参考になるし、読み物としてもまずまずです。
中程で冗長な部分があり、総頁も結構あるので、一気に読み切れないのでマイナス一つです。
結論としては流動性維持、リスクヘッジがリスクを大きくする合成の誤謬、あたりなのではないかと解釈したのですが。。。
巨大な災厄をもたらした金融イノベーション
邦訳題名が的外れだというのではないが、原題の”A Demon of our own Design” は「俺たちが魂を入れた魔神」、つまり人間ファウストが契約を結んだ悪魔を思わせる。これが投資世界にかかわるものであることを知らせるために副題は「マーケット、ヘッジファンド、そして金融イノべーションの災厄」となっている。「魔神」とはこの「災厄」の元凶であり、著者によればその災厄は現状ではほとんど避けがたい。それが今や現実のものになってしまったことはわれわれが身をもって知るところである。
それではこの魔神の正体は何か。それは一言でいえば「市場の複雑性」(高度にレバレッジを組み込んだ多種多様な金融商品の市場)とその市場内部あるいは相互間の「密結合」状態(本来はプロセスの構成要素が緊密に連携している状態を指すエンジニアリング用語)である。これだけではまだ抽象的にすぎるかも知れないが、ここから現実に起きている事態、つまり各種のデリバティブズの流通とそれが招来するシステミック・リスクに思いを及ばせることは可能だろう。著者は「金融商品を単純化し、レバレッジを減らすことが、金融市場の制度設計を修正する処方箋である」という。(それは正しい結論だと思われるが、07年に出版された本書が現下の危機が不可避だったと主張しているわけではない。)
本書は幾つもの投資銀行でリスク・マネジメントの実務に従い、半ばは学者でもある著者の実践と研鑽にもとづいた力作である。ここに紹介した結論に到達する以前に描かれた80年代以降の投資銀行各行の浮き沈みはこの世界に渦巻く欲望の強烈さと幾多の大銀行がそれに立ち向かい、危うく立ち直った、リスクの巨大さを改めて思わせる。賢人賢者と讃えられる投資世界の大御所たちがITバブルでは一敗地にまみれていることも興味をそそる。著者はヘッジファンドとは定義不能と考えているようである。たとえそうでないとしてもその定義には明らかに手を焼いている。そうとすればリスクを対象とする本書を細部まで理解できなくても恥とするには当たらない。
金融危機の原因に迫る
本書は87年のブラックマンデー以降、金融市場に起こった様々な事件の背景についてマーケットの真っ只中に居た筆者が生々しく語った一冊である。現下に起こっている金融不安・金融危機に関する直接的な記述はないものの、現在の金融市場における暴落のリスク、市場のメカニズムについて舞台裏を知ることが出来、現状起こっている事象を理解するのに非常に役立つ。
現在我々が直面している問題は流動性やレバレッジの問題であるが、複雑になり過ぎた金融システムが「密結合」している為に危険度が増していると言え、誰の手にも負えない代物になっているという指摘がある。
その一方で、生物学的には極めて単純な能力特性の方が複雑な環境識別・適応能力よりも、種の保存には有効であるという教訓から、貴重な情報を敢えて無視するような粗視的な意思決定をする方が、市場リスクから身を守る為に有効であるという考え方を示していることは興味深い。
ともあれ金融市場の過去20年を振り返り、リスクを極小化する為に編み出された金融工学の発達にも拘らず、市場リスクは逆に増幅しているのではないかと感じる直感を裏付けてくれる著作である。
金融クラッシュの処方箋?。
数々の金融クラッシュの実況中継、みたいなところがあって、野次馬根性で読むにはなかなか楽しい読み物です。
また、著者が述べる、「今の市場にまかせたままではクラッシュは不可避」というのは、納得できる意見です。「市場に任せておけば万事OK」なんていう話が、「まさに空論」であることは、本書の中身から良く見て取れます。
といいながら、一方で著者は、それを防ぐための「各種の規制」には否定的です。で。「それではどうする?」という問いに対する答え。これはなかなか興味深いものですので、ぜひご一読の上考えられてみてはいかがでしょうか?。
地味な研究書
訳文は読みやすいかと思いますが、地味で盛り上げに欠け、専門用語や固有名詞が多く出てくる特に前半は、門外漢には読み難いです。後半は、スリーマイル島やビクトリア湖のお魚から、グレイシー柔術の歴史まで、小話が多く差し挟まれ、金融リスクへの最適解とは何かを探ります。ぜんたいとしては、体験を印象的に綴った静かな研究書といった趣でしょうか。
リスク・暴落・バブルなどを考えるのに良い本。ただし、金融に関する基本的な用語は知っていないと読み通せない。
学問と実務の両方を理解している著者が、著者自身のすぐ近くで起きた暴落について述べている本。理論そのものと、その理論を用いる人々の両方についての多くの含蓄のある本。投資家や金融関係者のみならず、不確実なリスクに晒されている人が読んでおくべき良書。とはいえ、金融に関する基本的な用語やメカニズムは理解していないと読み通せない。そこが、万人向きではなく、残念である。
2007年5月12日の英語版へのレヴューを再録させていただきました。
どういうタイミングなんでしょうか、black swanに続く、市場関係者による警告の作品です。この作品には2つの焦点があります。ひとつは著者による金融市場の危機の分析です。題材として取り上げられるのは、著者が経験したblack mondayとsalomon brothersでの経験です。著者はこの経験を通して、現在のリスク管理モデルが抱える内在的な欠陥を指摘します。それは市場の流動性へのナイーヴな信仰とプレーヤーの個別には”合理的”な行動がもたらすことになる全体的な非合理性です。それぞれの危機の現場にいた著者によるこれらの状況の同時代的な描写と事後的な分析は類書には見られないものです。というよりも今明らかにされる当時の実情は恐ろしくなるほどです。これらの経験をベースに後半はどちらかというと哲学的なリスク管理の議論が展開されることになります。著者はこの世界でのいくつもの常識とされる前提への疑問を提示していきます。著者は、更なる精緻な管理手法の強化、情報の更なる開示が危機回避にもたらす効果には懐疑的です。著者は流動性こそが市場の鍵であることを強調し、そしてこの流動性の維持ほど市場参加者の微妙なバランスに依存するものは、ほかにはない点を強調します。著者が最後にたどり着いた結論は、”simpler financial instruments and less leverage"です。著者は、この提言が現在の金融市場の傾向と矛盾することは十分認識した上で、ある意味では自己否定とも思える結論にたどり着いているわけです。
読み物としてもおもしろい
ブラックマンデーのLORのポートフォリオ・インシュアランスからLTCMまで幅広い事例を扱っています。
読み物としてもとても興味深く読めました。
とにかくシンプルにという考えが流石という感じでした。
コキブリとヘッジファンドという章のタイトルはカッコ悪いですが、まさにその通りだと思いました。
結局、金融工学は無力だったのか?
金融工学がもたらしたのは、結局市場の不安定性だったというある意味身も蓋もない結論を読者に納得させるため、ありとあらゆる逸話が披露されている。
もちろんアジア通貨危機やネットバブルなど金融に関する事案も多いのだが、スペースシャトルの爆発事故やスリーマイル島やチェルノブイリの原発事故などにも言及し、何故危機は回避できなかったのかが、冷静に分析されている。
日本金融界は金融工学の遅れをさんざん指摘されてきたが、遅れていたが故に今回のサブプライム危機の損傷は少なかったのだろう。本書を読むとそんな気がしてきた。
現代金融物語
・ブラックマンデー前にプットオプションを買い、見事ヤングリタイヤしたトレーダー
・日本の不況時、日本国債の取引等で20億ドル稼いだソロモン日本支店
・ロシア危機寸前に、ロシア国債とルーブルから脱出したソロモン
・流動性の無い優先株をUBSに買わせ、大損させた日本の金融機関
・インターネットバブル時にバリュー投資を貫き、破綻したタイガー・マネジメント
実にさまざま悲喜劇が本書で展開され、さながら現代金融物語である。
また、投資のヒントが満載であり、読み終わるのが勿体無く感じた。
