水源―The Fountainhead

  • [著]アイン・ランド
  • [翻訳]藤森 かよこ

カテゴリ:
単行本 (1037頁)
ISBN:
4828411321
発売元:
ビジネス社 (2004/07/08)
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評価: 4.5
2008
08/03
Sun

自由のはき違えに注意

33.3% (2 / 6)
[No.35] posted by antinwo

訳者は,あとがきの中で,日本人をアメリカの寄生虫の如く表現し,冷戦状況の対立思想に
言及している。
極めて,二元論的な論理展開であり,そのことが自らの思想の押しつけとなって,他者の
「自由」を制限していることに気づいていないのは残念である。
即ち,ランドの価値観だけを押しつけるのは,どの様に生きることも自由であるということ
を制限してしまっている。
それが,本人の「自由な選択」であるならば,「反米サヨクごっこ」に終始するのも「自由」
ではないのか。
「より良く生きない自由」も認めてこそ,本当に他者の「自由」を認めることであろう。
本質的な「自由」をいうのであれば,自分は「より良く生きない自由」を「選択しない」と
いうことだけで,そのことを論評すべきではないだろう。

その意味では,ランドの思想は一つのものであるが,「全てではない」ことを認めないと,
前述のように,自らが他者の「自由」を制限するという誤謬に陥ってしまう。
そうでないと,「私が生きることができるのは,私自身の生だけなのだから,私は私の主体に
なるしかない」という訳者の言葉は,嘘になる。

2008
06/26
Thu

人生に迷ったら、ロークに聞こう!

75.0% (3 / 4)
[No.34] posted by つばき

映画『ダイ・ハード』のジョン・マクレーンのモデルは、『未来少年コナン』だと
ずーっと信じていたのですが、『水源』を読んで考えが改まりました。コナンのス
タイルにインスパイアされてはいるものの、本当のモデルはハワード・ロークであ
ると。
さらに、ハワード・ロークは、すべてのアメリカン・ヒーローの原点であるという
結論に達しました。その理由は、この本を読めばわかります。この2段組 1032 頁
の大作には、アメリカ人を理解するための材料、さらには人間の心理を説明するた
めの言葉があふれています。

アメリカで今も読み継がれる大ロングセラー、建築を学ぶ学生必読とも言われてい
ますが、まだ人生を模索中の若い人たちに是非読んでもらいたい一冊です。そこに
は、ピーター・キーティングという人物を通して、親に進路を強制されることの悲
劇も描かれています。ドミニク・フランコンを通して、自立することの意味を紆余
曲折を経てやっと手に入れる幸福が描かれています。さらに、あの映画やこの映
画、いろんなアメリカ映画のアイデアがてんこ盛りです(デミ・ムーアの『幸福の
条件』のアイデアもここにあります)。

100 ページの本を 10 冊読むと思って、この大作を楽しみましょう!

2008
03/10
Mon

言葉がぐわっと

50.0% (2 / 4)
[No.33] posted by 32

心に突き刺さる、とはこういうことを言うのですね。いままで言葉にできなくて、感覚として捕らえていたぼんやりふわっとした子を、つかまえた!!!と思いました。おにごっこが、とりあえず、終わったとでも言うのでしょうか。今は、五時の鐘が鳴って解散した帰り道、自転車を漕いでいるときにみる夕暮れのような黄昏時のような、あの感覚です。

2008
02/21
Thu

若い人はぜひどうぞ!

75.0% (3 / 4)
[No.32] posted by ミュンヘン

9.11事件以後、アメリカ政治に興味を持ち、副島隆彦氏のサイトで紹介されていた『水源』を知っ
た。作者のアイン・ランドが提唱した客観主義という思想は、リバタリアニズムと呼ばれるラディ
カルな自由主義に属し、個人の自由と平等と幸福の追求の権利を守ることだけが政府の機能とする
最小国家を支持するものである。この本の主人公ロークは、独創的な考えを持つ天才建築家であり
彼を通して、人間は決して他人に依存して生きるのではなく、自分の知性から生まれた独立した仕
事によって、自立して生きるべきだということを教えてくれる。

小説の登場人物がそれぞれ魅力的で、読んでいてまったく飽きない。ストーリーも、特に後半は
「次はどうなる?」の連続でおもしろい。ひとりひとりの性格がセリフに表れていて、生き生きと
している。これは翻訳の力に負うところが大きいと思う。「他人のために生きよ」と説く評論家の
エルスワース・トゥーイーのしゃべり方など、あまりに気持ち悪くて(?)背筋がゾクゾクして来
る。マスコミを操作し人々を組織して、ロークの社会的抹殺を画策するところは手に汗握る。

また、主人公が建築家なので、ロークが設計した建物も数多く描写される。それらは自然に溶け込
みコストがかからず、隅々まで配慮されて美しい。建設現場で働く職人に対する作者の視線はとて
も暖かい。ロークは他人に関心がなく、影響されないので冷たいと思われるが、わかる人には彼が
他人を活気づけ、命を与える人間だと感じさせる。彼が建てる建築物もそこに住む人に、人間の智
恵と力を信じ、より良い人生を生きたいと思わせるものなのだろう。

2008
02/17
Sun

小説の中でぐらいヒーローの話が聞きたいものだ

75.0% (3 / 4)
[No.31] posted by s.m

ひとつの才能を有し、疑うことなくその道を邁進し、(そして、受け入れられていく)
ロークを心の底から羨ましいと思ってしまった。そして、周りの人の反応を気にし過ぎて
しまう自分を思い、これが利他主義というものだろうかと少し悲しくもなった。

一方で、田園に広がるモナドノック渓谷保養地や、エンライトビル、その他数々の建造物
を想像することは非常に楽しく、この小説を読んだことで、いつもの街を見る自分の目が
変わってきたように思う。普段何気なく通り過ぎる家並みに、ふと眼を留め、想像をめぐ
らせている自分に気づく。

2008
01/13
Sun

自分に嘘をつかないことが自分自身を尊敬できることにつながる

85.7% (6 / 7)
[No.30] posted by 荒野の狼

大著なので読破に時間がかかります。英語版にある作者自身の序言は理解の助けになりますが、この日本語訳には含まれていません。またSecond-hander をセコハン人間、Bannerをバナー新聞と注釈なしに訳してますが、原文の意図が伝わるか疑問です。登場人物が本当に何を考えているのかが明らかになるのが最後の章で、彼らの心理分析のなぞ解きのような楽しみがありますが、辛抱が必要です。色々な思想が入っており、そのすべてに共感するのは難しいでしょうが、自分に嘘をつかないことが自分自身を尊敬できることにつながるといった素晴らしい哲学が述べられています。金言は、この物語のヒーローのロークからだけでなく敵役からのトーイーからも発せられています(あらゆる孤独は衆愚の高みにあるp382, 個人的愛はひとりの人間に対して愛情を与えてしまうので、他の人々への愛を結果として奪ってしますp452,理性ならば理性と戦えるが不合理な理不尽なことを敵にまわすと勝ち目はないp486)。資本主義者かつ無神論者の著者ですので、アメリカ人が読むと、共産主義と宗教の利他主義に対する遠回しの批判が興味深いところだと思います。ただ、日本においてみられる集団主義的行動に対する非難もこの本の一つの焦点です。この本では建築家の主人公が理不尽な理由で、建築をまったく知らない一般大衆も一緒になって世論をあげて攻撃されます(“退屈を癒し、自分自身に向き合うことから解放してくれる共通の怒りという贅沢に、みなが一致団結した。自分達というものに向き合わなくてすむことが、いかに有り難い祝福であることか、人々はよくよく承知していた”)。この一件は、チャリテーに参加したことでマスコミの総攻撃をあびた横綱朝青龍関に対する騒動が思い出されます。ここではチャリテーには無縁で相撲など知らない人間が、自らの品格を棚にあげて、医者に変わって仮病の診断を下し横綱を精神障害にまで追い込んでしまいました。

2007
12/11
Tue

建築学科の学生必読書

80.0% (4 / 5)
[No.29] posted by Yangyang

NHKラジオ講座ビジネス英会話講師の杉田敏先生の推薦書です。Ayn Randはアメリカの作家・思想家(リバータリアニズム: "Man's ego is the fountainhead of human progress.")です。

この小説は、斬新な設計で知られる建築家が周囲の偏見や無理解、陰謀を乗り越えて成功して行く軌跡を恋人の視点から描いています。作家の思想が随所に見られますが、のちの"Atlas Shrugged"のように思想に共感していないと不快感を覚えるほどではないと思います。僕は彼女の思想をプラグマティズムの典型のように受取って読んでしまいましたが、実はリバータリアニズムはアメリカでもかなりの無政府主義のようです。建築家フランク・ロイド・ライトをモデルに書かれており、アメリカ・カナダ では建築学科の学生必読書だと聞きました。

日本語訳も出版されているようですね。

2007
10/23
Tue

不可解

64.3% (9 / 14)
[No.28] posted by tomomori

アイン・ランドについては多少知っていたが偏見を持って本書を手にした訳ではない。それどころか、他のレビュアーさんたちの感想を読んで楽しみに読み始めたくらい(ハーレクィン展開を特に楽しみにしていた)。しかし半ばまでずっと乗れず、結局途中放棄してしまった。
まず作者の「まえがき」がいけない。作品講釈やら思想表明なんてしてはいけない。ニーチェがどうのなんて言わなくていい。これでもう作者の主張は透け透けだ。ページを繰り出すと、作者が賛辞を注ぎこむヒーローの「孤高の天才」ぶりはひたすら漫画チックでウソ臭く、読めば読むほど萎える。というか、このヒーローはまず人間ではない。キャラの膨らませ方もダサい。台詞も硬くて不自然でダサイ。かてて加えて、全てが作者の思想を開陳する為の道具と思えばますます疲れてくる。
そもそもアイン・ランドは才能ある小説家だったのだろうか?私にはこれはかなり拙い小説に思えるのだが。文章など文法こそ正しいが結構下手な感じがする。ヒーローの目指す理想の建築やらを描写する下りなど、ベタ過ぎて滑稽だしリアリティもない。しかし最大の弱点は、この作者にはユーモアやアイロニーの欠片もないところだ。クソ真面目である。自分自身に。自分の信念に。
もっとも二十歳過ぎてアメリカに移住したロシア人が英語で書いた小説と思えば、非母語と格闘した移民女性に心から感心する。「私はとてつもなくスゴイのよ!」という見得切りにロシア的パーソナリティが垣間見えて面白くもある。彼女は戦後アメリカの怪しい系文化人だったのだろうか?いまひとつ立ち位置が見えない女性だ。これはこれで帝政ロシアが生んだ神秘かしらん。

2007
05/17
Thu

熱くなりました

66.7% (6 / 9)
[No.27] posted by ゆきこ

辞書ほどの厚さにもかかわらず一気に読み終えた。この頭の芯が熱くなるような感じには覚えがあるぞ,,,,そう思い出した。遠い昔「風と共に去りぬ」を読んだ時の感動だ。
夢中で読み進み、読み終えた後には歴史書何冊読むよりもその時代が(ここでは1930年頃)クッキリ浮かぶ点が「風とー」に重なる。しかも「水源」は、人間とは、自由とは、社会とはetcを問う哲学書でもある。それが魅力的な登場人物らによって語られるので、すんなりと(でもないか)頭に、心に届く。
天才建築家ロークの関心は、全能を傾けより良い建築物を創ることだけで、世俗には全く無関心、「創造はその人間の持つ精神から生じる」と信じ一切の妥協をしない。しかしこういう人物は「世間」から見れば、既存の価値観をひっくりかえしかねない厄介なヒトでもある。
トゥーイは「良識ある世論」という力を用いロークを排斥しようとする。人間を卑小なものとしか思えない彼は、利他主義という美名を掲げ「無欲で博学なるオピニオンリーダー」として沢山の追従者を得ている。人々の精神のフィクサーになり、世をコントロールできる権力を欲する彼は、自分が制御できないロークのような創造的人間を嫉妬し憎む。(トゥーイの描き方が秀逸!)
トゥーイを軽蔑しながらも雇っている新聞社社主ワイナンドは、叩上げの人物で、誇り高く、自身は高い審美観を有しながらも、人間の俗悪さを煽る新聞発行で財を築きマスコミ界を牛耳っている。根底にはロークと同じ資質を持ちながらも、屈折していて陰影に富みワルでもある。(しかも男前でとにかく素敵!)この彼がロークの気概ある恋人に一目惚れし結婚、そしてロークとも深く心を通わすようになるのだが,,,,。やがて事件、どんでんがえし、クライマクッスと展開してゆく。もっと書きたいのに字数制限が残念。ぜひ読んでみて下さい。

2007
04/30
Mon

スティーブ・ジョブズは、現代のハワード・ローク?

66.7% (6 / 9)
[No.26] posted by らじをらいふ

今回、日本語訳が出版されていたことを知り、圧倒されるようなページ数に耐えながらなんとか読破することができた。以前のレビューで多くの方が指摘しているように、内容は物語のスタイルで借りたランドの思想表現である。登場人物の台詞、裁判での陳述などという形で、ランドの思想を我々に訴えかけている形のため、その語り口が重要であるが、主人公であるロークの敵手であるトゥーイーの語り口の気持ちの悪さなど、うまく日本語の台詞として表現されている。(語り口だけで見事に「キャラ立ち」している!)

読み終わった後、ストレートな生き方を突き進むハワード・ロークに嫉妬したくなるほど羨ましく思った。
アイン・ランドの思想には賛否両論あり、またそのカルト的人気に批判する声もある(書籍「なぜ、人はニセ科学を信じるのか」では、「ありそうにないカルト」という章でアイン・ランドを取り上げている)が、それを踏まえてもぜひ一度読んでもらいたい一冊である。また、アイン・ランドの他の作品、論文集などの日本語訳が今後進んでいくことを切に望むところである。


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