- [著]桜庭 一樹
- [著]むー
- カテゴリ:
- 文庫 (206頁)
- ISBN:
- 4829162767
- 発売元:
- 富士見書房 (2004/11)
- 定価:
¥ 525 (税込)- 在庫状況:
- 在庫なし
ユーズド商品:¥ 855 より
砂糖菓子の弾丸は…
この物語は決してハッピーエンドにはならない
それは冒頭からすでに決まっていることです
読み進めるたびにただただ痛い現実が胸に突き刺さってきます
子どもにはどうにもならない世界
どうしようもない現実
それでも私たちは…
甘い甘い砂糖菓子の弾丸と痛い痛い実弾どちらを選ぶべきなのだろう
ラストの一文はリアルな現実を突きつけます
今を生きる私たちがよんでおくべき作品です
青春暗黒ミステリー!
と題されていますが、推理性はほとんどありません。 早く大人になることを望む少女と、自分を人魚だと言い張る二人の少女が出会い、儚く揺れ動く。 ー全ては生きるために、生き残っていくためにー。 甘ったるく、腹の足しにならない砂糖菓子の弾丸と、現実を生き抜くための実弾。 大人になるまでに誰もがこの二種類の弾を自身に込め、必死にぽこぽこと撃っていた。 自分は登場人物の思いに多く共感でき、昨今ではもはや珍しくもなくなってしまったニュースに、ふと耳を傾け、もう一度思いを馳せる良い機会になりました。 本作は200P程で、十代半ばの方でも読み易いすっきりとした文なので、興味のある方は一度手に取って見て下さい。 余談として杉基イクラさんの描く漫画版(上・下)も、原作の補完としてお薦めです。
世の中にはそう珍しくはないこと
「少女らしさ」という大人が持ちがちなファンタジーにそぐわぬであろう、衝動と暴力、苦境と慟哭を、あえて桜庭は取り上げる。
ラノベであるが、内容は夢物語ではない。虐待の現実にそぐう内容である。困窮の現実にそぐう内容である。同種の困苦を背負う少女たちは、少年たちも、現実に多い。
成長の物語と言い切るには、本人の手の届かないところでつきつけられる限界が大きすぎる、そういう課題を与えられた子どもたち。
奇麗事に聞こえるかもしれないが、だから、それでも、子どもたちに安心を確保するべく奮闘している大人たちもいる。
そこまで言及することで、桜庭は子どもが主人公たちに投影するであろう、「敵は大人」というファンタジーもやわらげてみせる。
生き延びることができさえすれば。生き抜くことさえできさえすれば。
砂糖菓子の弾丸しか持たない子どもたちが、そんな弾丸でも十分に戦って生き抜くことができる、安心な世界であれば。
砂糖衣に覆われて隠されているものに思いをはせる読書になった。
砂糖菓子の弾丸は…
純粋に話の組み立てや伏線の使い方は巧いし、登場人物は美しく、独特で、でもどこか共感できる部分を持っている。
文句無しの傑作である、のだが私には毒が強すぎたのか、軽くトラウマになりつつある作品でもある。
あの恐怖感に近い読後感はなんともいえない。
この作家はバイオレンスの取り入れ方が本当に巧い。
スカートの中の痣とか、「嘘だから、平気」という言葉の中に伏せられているからこそ、逆に痛々しいほど「暴力」の怖さは引き立っていた。
「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」といいつつ、私の心は蜂の巣状態にされ(笑)、色々なことを考えさせられる作品だった。
かつては自分も撃っていたはずなのに。
鳥取県の田舎町に住む少女ふたりの、1ヶ月間の物語です。
彼女たちは中学2年生。
リアリストのなぎさは、社会と戦うために感情を押し殺し、実弾を求めて生きている。
父親から虐待されている藻屑は、傷つけられながらも愛している父親と、誰も味方がいない自分を守るために、嘘で塗り固めた砂糖菓子の弾丸を撃ち続けている。
そんななぎさと藻屑に芽生えた奇妙な友情と、彼女らを取り巻く大人や家族、同級生たちとの日常が、桜庭さんらしい瑞々しい筆致で展開していきます。
そして、藻屑の死で、物語は幕を閉じます。
(もっとも、藻屑の死そのものは冒頭でネタバレされるのですが)
藻屑が殺される前に、なぎさは藻屑と一緒に逃げ出そうとします。
箱庭のような街から。
ふたりでうまく逃げ出せていたら、結末はどうなっただろう。
きっと、遅かれ早かれ、藻屑はやっぱり藻屑になったのでしょうね。
だって、砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないのですから・・・。
今日も子どもたちは、声なき叫び声を発しながら、砂糖菓子の弾丸を撃っています。
かつては自分も撃っていたはずなのに、大人たちはそれに気がつきません。
とてもとても哀しい現実です。
この作品は、いつの間にか大人になっていた私に、あらためてそれを気付かせてくれました。
救いがあるのは、藻屑の撃った砂糖菓子の弾丸が、なぎさや友彦の心は撃ちぬけたことかな。
惜しむらくは、設定がとても雑なこと。
これは編集者の責任ですね。
それぞれのキャラが魅力的なだけに、そこだけちょっと残念な気がして、★4つ。
何度読んでも飽きることがない
私はやはり、単行本ではなく文庫のほうをおすすめしたい。
甘い絵と苦い文章との大きな「ずれ」がないと、自分自身がその世界に完全にのみこまれてしまうと思う。あまりにも脆い精神と強く望むものとが小さな場所に入り組んでいて、息ができなくなる。
一度読んだだけで、すべてを理解できる人はほとんどいないと思う。何度も読み返し、その中で新たな見方や、真実を知ることができる作品だと思う。
丁寧な文章
評価の高い、衝撃の冒頭。
一つ一つの言葉を丁寧に紡いだ文章。
救いなく、訴えかけるストーリー。
タイトにまとめた構成。
心に残る登場人物。
才能がある人が丁寧に書いた文章。
それを読むだけでも価値があると思います。
友情物語
世間から愛されなかった
二人の少女が出会い
、そしてその別れまでの一ヶ月間を
綴った物語。
場面場面の田舎街の描写が、物語全体に緊迫感を与え
、展開もテンポ良くて、サラッと読めてしまいます。
しかし、冒頭部分に衝撃的な結末が描かれており
、ページ数が進むにつれ、
「この子達は、こんなに頑張ってるのに…どうして?」
とその時が来るのが、恐くなって読みたくなくなります。
しかし、それが、彼女が初めてできた親友の為に選んだ道
なのです。主人公はそのメッセージをしっかり受け止め
、世間を実弾としてしか受け止めていなかった自分から
前へと歩き出します。
残酷な描写も、確かにありますが、それが物語の本質ではありません。
これは、
自己を犠牲にし、親友に前を向いて欲しかった少女と
全身でそれに答えた少女の
一生忘れる事のできない一ヶ月の友情物語です。
少女特有の脆さ
「好きって、絶望だよね。」
中三の、回りの誰から見て完全なるも少女だった時に読んだ。ラノベの手軽に読める文学性を求めて購入した。絵が可愛いから、桜庭一樹さんの作品だから、と、案外軽い気持ちで。
だけれど、この本は軽い気持ちで読んでいい作品ではない。
主人公の少女二人は、守ってもらわなくてはいけない子供の立場にありながら、守ってもらえなかった。安心感の感じられない少女達だった。それに対して片方は早く大人になろうと実弾を欲し、片方は早く逃げようと砂糖菓子を撃った。
少女特有のいつも何かに追われている感覚。読んでいてそんな感覚に陥った。一番始めのページで既に痛々しい真相が描かれている。だからこそ、藻屑の結末が切なく、痛い。
正直トラウマになった。読後感はただただ、苦しかった。
だけど、多くの人に読んでもらいたい。
藻屑が撃った弾丸を、知ってもらいたい。
砂糖菓子では、生きられないのだ。
生きてく痛み。
主人公・山田なぎさは母子家庭で兄は引きこもり。
中学校を卒業したら、自衛隊に入隊して「実弾」を手に入れたいと願う。
一方、転校生の海野藻屑は、父はアイドル歌手の上、家はお金持ち。
「僕は人魚なんだ」と言い張る藻屑が、なぎさには空想世界でぽこぽこと砂糖菓子の弾丸を撃っているようにしか見えない。
けれど、藻屑のほうがなぎさよりもずっとシビアーな現実を生きていた。
この少女二人の対比が本当にすごいです。どちらの痛みも理解できます。
また主役二人だけでなく、脇役の存在感も深いです。
個人的には、なぎさたちの担任が印象的でした。
桜庭一樹さんはすごく懐の広い方なのだろうなあと思いました。
表紙のイラストで手に取るのを一瞬躊躇ってしまいそうですが、
読みおわったあとで再び見返すと、
まるで砂糖菓子にまみれたようなこの甘いイラストも、物語の演出の一つのように思えてぐっときました。
