マンガ蟹工船―30分で読める…大学生のための

  • [著]小林 多喜二

カテゴリ:
単行本 (183頁)
ISBN:
4894691051
発売元:
東銀座出版社 (2006/11)
価格:
¥ 600 (税込)
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7,833 位
評価: 4.5
2008
09/02
Tue

『蟹工船』入門には最適。

80.0% (4 / 5)
[No.8] posted by ずみりは

「30分で読める 大学生のための」キャッチコピーを含めたタイトルこそ、内容に不安を感じさせはするが、そこはご安心。というか、中学生くらいからを対象に考えてもよかった気はする。 お値段もこのサイズ・厚さの漫画作品としてはリーズナブルで、気軽に買えるだろう。

蟹工船――船としても工場としても扱われなかった、法の隙間と「不透明さ」ゆえに労働者達への人としての扱いなどまるで及ばなかった究極の閉鎖空間。汚れ汚れた不衛生な環境、逃げられない牢獄としての「船」と、棍棒に拳銃といった暴力による支配の象徴として描かれる「監督」が彼らを雁字搦めにしてしまう。

現場では常に暴力的な監督の制裁を恐れ、いつしか自我さえ危うくなった彼らは器械のごとくに作業をこなすように。病人や怪我人が出ようがお構いなし。そして厳寒に荒れる海という、常に命を張った極限状況がその崖っぷちの地獄にさらなる追い風を叩きつける。

そんな中、ふとしたきっかけで「支配者側に対して圧倒的に頭数でまさる労働者達は、このまま命をヤスリで削り落とされるようにジワジワ殺される以外にも、出来ることがあるのではないか?」といった発想が生まれるが……
巻末には読み応えのある『蟹工船』および小林多喜二に関する考察・解説文がふたつ。こちらも非常に上手にこの作品の骨子を明るみに出しており、表現上の細かな仕掛けに解説がなされていたりする。「30分で」初めて読んだ方だと「ああ、なるほど」と思われる部分も多いはずなので、こちらもマンガ読了後に目を通されることをおすすめする。
――原典は日本におけるプロレタリア文学の金字塔として歴史教科書ではほぼ確実にその名が見受けられるうえ、海外からも評価を受けたりしているような有名作。しかし、これをこの時代に出したらどうなるか、容易に想像のつく中、命懸けで世に送り出した小林多喜二の非業の最期はそれ以上に有名である。この時代の社会背景、社会主義思想弾圧・特高警察の凄惨な拷問の象徴ともいえる。

さて、『蟹工船』はマンガでも原典を重視すべく多々引用されているが、非常に奇抜な比喩を用い、またひとつひとつの比喩自体が伏線となり他の比喩とリンクして連鎖、強烈なストロボを浴びせるのように要旨をズバッと明るみにする計算されつくした手法など「プロレタリア文学」という色眼鏡で見ずとも、一つの文芸作品として大変画期的で挑戦的な逸品であったといえる。 同時にそれは、類い希なる鬼才を最も残念な形で失ったという、日本文学史上の大きな悲劇を意味している。
本書巻末にて「このマンガが初の人は是非原作を読んで欲しい」と書かれた後に「原作を一度読まれて入った方はもう一度読んでほしい」などと書かれ、私も久々に探してみようと思った次第である。

2008
05/29
Thu

映画化を切に望む

87.5% (21 / 24)
[No.7] posted by くま

大学生協でこの漫画が売れているんだ、と聞いて読んでみた。
いい所は、原作では分かりにくかった方言を当時の地方性を残す程度に分かりやすい現代語に置き換え、時代性で分かり難いところを、絵の描写ということである程度描くことが出来たところである。結果非常に分かりやすくなった。
 一方で、原作の中の息苦しさ、臭い、そして一番肝心な登場人物の感情が描きこみ不足もあり、不十分。もちろん、ページ数の制限もあるが、力量不足と取材不足もあるだろうと思う。

「蟹工船」をこうやって改めて漫画で見ると、つくづく名作だと思う。ひとつの船の中に、無権利状態の労働者の命をモノとしか見ていない資本家、それを助ける政府陸軍、資本家におもねる労働者たち、そしてやがて労働意識に目覚める底辺の労働者、そして結果的に当時の日本そのものを重層的に描くことに成功している。そして非常に視覚的、映画的なのだ。
抵抗の仕方はだんだんと進化する。途中までは個人で、やがては組織的なサボタージュ、そしてリーダーを中心とした船中を巻き込むストライキ、それを政府陸軍の介入により潰されると最終的には労働者一人一人の自覚のもとでのストライキへ。畳み掛けるようにラストに持っていく様は非常に映画的だ。

一度映画化されているが、現代にもう一度映画化する意義は十分にあるだろうと思われる。この原作の中の、ワンカットワンカットを積み重ねる作り方や、群集シーンのモンタージュ理論の応用などはそのまま使えるだろう。惜しむらくはおそらく時代的制約もあったのだろう、最後のストライキの部分があまりにもあっさりとしているので、そこをきちんと描いてもらったなら、映画史に残るような力作になるかもしれない。描けるような監督はいるのだろうか。うーむ、それが問題だ。

2008
03/13
Thu

読んでよかった

80.0% (8 / 10)
[No.6] posted by アースクリエイト企画工房

漫画でも小林多喜二「蟹工船」のすごさが伝わった。
ここに書かれているいることは、現代にも通じる内容。読んでよかった。
昔、映画にもなったと解説に書かれていた。映画も見たくなった。
値段も安く、すぐに読める。中学生でも読める。
お勧めの1冊。

2007
05/18
Fri

大学生ばかりでなく、中学高校生にも。そして無論大人の方にも

84.6% (22 / 26)
[No.5] posted by fouche

今回の漫画化は非常にうれしい。一部を除いて、原作エピソードのほとんどをわかりやすく映像化している。 当時の写真も載せてあり、かなり読み応えがあります。
欲を言えば註をもう少し整理してほしかった。同じものが2回出てきたり、「花札」や「色よい返事」など大学生や高校生にはわかりきった言葉に註がある。よしんば分からない人がいても、絵で、あるいは文脈で分かるし、辞書で引けばすむ。それくらいなら当時の貨幣感覚を解説してほしかった。
しかし本書が優れたガイドであることには変わりはない。値段が安いのも学生への配慮だし、巻末の作品作家解説も充実しています。
小説を読んだ方にもお勧めです。

2007
01/31
Wed

ペコちゃんもびっくり!!

29.6% (8 / 27)
[No.4] posted by ペコちゃん大好き

不二家は現在、洋菓子への異物混入と食物衛生不備で、その経営も窮地に立たされています。(ToT)  それで思うんですけれど、多喜二さんの「蟹工船」の物語も=カニ缶詰に「石ころ」でもいれておけ!!=というようなことで、食べ物の異物混入の問題を告発したものだと発見しました。それはこの「マンガ蟹工船」の島村輝教授の解説に触発されての発見なんです。キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!! 異物――それは「石ころ」ではなく、さらに大腸菌を含んだ異物だというのですからペコちゃんもびっくり!!(*'▽`*) なんともものすごい事件です。まるで今回の不二家事件を予言しているような・・カニこーせん ¥/‾‾‾‾¥

2006
12/24
Sun

買いです♪♪♪

88.5% (46 / 52)
[No.3] posted by めい

マンガを読んだあと、すぐに原作がすごく読みたくなりました。原作と読み比べていっても楽しいと思います。原作の迫力はスゴイ!と改めて感じさせられることうけあいです☆
 また、多喜二の遺体を囲む同志たちや遺族の様子からマンガが始まるのも新鮮でしたし、当時の蟹工船の様子を写した写真が載っていたり、注釈も丁寧で、ただのマンガじゃないな〜と感じさせられました。画風はリアルで、原作の雰囲気を損なわない感じですが、それでもマンガならではの軽快さもあって、若い人にもすぐ読み切ることができると思います。ただし^^!マンガの方では省略されている原作の部分が、私としては最も印象に残っているので、ぜひぜひマンガを読んでまだいけそうな方には原作を読むことをおすすめいたします♪
 そして、この「マンガ蟹工船」を買ってよかった♪と思ったのは、巻末の島村先生の解説がすごく斬新で面白かったことも大きいです。これでこの値段はとても良心的だと思います。
 わたしはシブめの文学が好きな友人たちにもこの「マンガ蟹工船」をプレゼントしましたが、みなさんとっても喜んでくれました♪♪多喜二を読んでみたいけど、ちょっと・・・と躊躇なさっている方はぜひ読んでみてください☆

2006
12/08
Fri

小説より分りやすい!!あたり前かぁ

70.6% (12 / 17)
[No.2] posted by 村琢也

30分で読める・・・というだけあって一気に読めました。
以前に原作を読もうとしたのですが、10ページも読まないうちに挫折していました。
これはケッコウいけるかもしれませんね。
推薦します。

2006
11/17
Fri

「マンガ蟹工船」の出航を祝う!!

86.8% (33 / 38)
[No.1] posted by jun_takahashi

今日(11/17)の「読売新聞」(秋田)に、この本が紹介されている。★秋田出身の作家だから当然といえば当然かもしれない。しかし、「知名度の高さに反し、“読まれない作家”になりつつある多喜二だが、近代日本の暗部を告発し、人間の持つ無条件の尊さを描いた作品は今なお胸を打つ」とし、「今回の漫画本は、活字離れが進む若者にとって、多喜二の格好の入門編となりそうだ。」と結ぶこの記事には、郷土の作家紹介以上の熱を感じる。小林多喜二の名は歴史的人物の名とは知るものの、作品は読んだことがないという若者が多い。このマンガは、「ゴルゴ13」系の劇画のタッチで多喜二の作品世界を再現している。そういうリアルなタッチが、多喜二のリアリズムとよくマッチしているといえるだろう。★また巻末の、女子美術大学の島村輝教授の解説も、14ページにわたる画期的な"解説"で、蔵原惟人をはじめとするこれまでの「蟹工船」論は、島村の「蟹工船」論の序章でしかなかったかと思える力作となっていて必読。
漫画自体は、それなりに工夫もし、分かりやすさもあり、注釈も丁寧にありで、「大学生のための」というレベルではないと先のレビューでは辛い点をつけてしまったけれど、解説はすばらしい。目からウロコの画期的なもの。漫画本の解説ではない。小説「蟹工船」に対する、画期的な内容だ。漫画本と思って馬鹿にしていたけれど、これはスゴイ。で、その内容はやっぱり読んでもらうしかない。
                        ◇
ところで、漫画は活字も大きく、シルバー世代もOKだし、注釈やルビが丁寧につけられているのを見ると、編集者の意図は、中学生からシルバー世代をもターゲットとしているのではないだろうか。それでいて、「大学生のための…」とタイトルをつけているのは、特に就職難や、これからの進路を考える10代-20の世代にこそ読んで欲しいということだろう。それでこの600円というリーズナブルに定価なのだろう。


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