疫病は警告する―人間の歴史を動かす感染症の魔力 (新書y)

  • [著]浜田 篤郎

カテゴリ:
新書 (238頁)
ISBN:
489691841X
発売元:
洋泉社 (2004/08)
価格:
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82,500 位
評価: 4.5
2004
10/01
Fri

疫病ウォーズ

80.0% (4 / 5)
[No.2] posted by ソコツ

その病をめぐる印象的なエピソードで各章の幕が開き、読書欲がわいてきたところで病の内容の解説が簡単に行われてから、本題に入っていく。つかみがいい。単純に本としておもしろかった。疫病VS人類の世界史が、軽快な文章と様々な物語、とくに医療関係者の生死をかけた戦いをハイライトとして描かれている。
著者は相当の読書好きだろう。引用される書物は、「聖書」や「レ・ミゼラブル」や「シャーロック・ホームズ」から、はては小松左京のSF小説まで、とにかく幅広い。教養人である。そこにひとりの医師として感染症対策に取り組んできた著者の経験の厚さが加わるからこそ、本書は優れた新書となっているのだ。文理系を問わず、おすすめします。

2004
08/27
Fri

疫病の歴史を並べてみると見えてくるもの

100.0% (5 / 5)
[No.1] posted by 赤い炭酢

 ペスト、ハンセン病、エイズ……そしてSARS。本書で扱われている12の「疫病」の多くは、人間が地球の生態系を攪乱した時期に、人間社会に発生しているという。地球上の先住の生命体としての微生物が、人類という増殖する新種の生物に対する毒性を高めて、人類の個体数を調整する役割としての感染症を生じさせてきたのだ、と。生態系破壊者である人間を抹殺しようとする微生物たち。恐ろしい事である。

 しかし、得体の知れない「恐怖」という感情もまた恐ろしいものなのである。本書を読むと、それらの疫病を、世間が特別な病として恐怖するあまり、精確な情報・知識ではなく恐怖から派生した偏見によっての誤った対応が、さらにあらたな禍を呼び起こす結果になったというような共通点も見えてくる。古くからハンセン病は人間の外観を変形させる病であるためにとりわけ恐れられた。患者への社会からの不当な差別は今なお存続している。最近ではSARSの流行に、情報の扱い方が「恐怖」の感情を増進させた例を見ることができる。エイズは最も典型の例。当初、エイズは、ゲイのように「不道徳な人間」がかかる特殊な病気、だという偏見が先走った。そのことが初動対策を誤らせる要因となり、病気の拡大を招いて、差別と排除をいっそう助長したのだ。
「恐怖」が「差別」を生んでしまう。疫病のみならず、人間社会のそこここに見られる構図である。


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