- [監督]ジャン・ルノワール
- [俳優]アンナ・マニャーニ
- カテゴリ:
- DVD (103分)
- 発売元:
- パイオニアLDC (2000/06/23)
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色の繚乱!素晴らしき人生のパロディ!
アンナ・マニャーニ扮するカミーラが戸惑う人生。なにが喜びなのか。何に幸せを感じるべきなのか。彼女でなくても抱く永遠のテーマですね。
この永遠のテーマを語るのに相応しき場所は、我々にとって非日常を感じさせてくれる所。そこは冷静に人生の意味を検証できるために身近な場所ではなく遠隔地でなくてはなりません。そこで18世紀の南米がこの映画の舞台なのでしょう。しかも、そこはスペイン貴族に統治されています。さらにはるばるイタリアから劇団がこの地にやってきます。この時点でこのフィルムは国籍を完全に無くし、ついにはリアリティさえ完全に脱ぎ去るのです。ましておや私たちは舞台劇を見ているという物語上の設定の巧みさ。そこにビバルディの「春」が流れただけで観客はこの“劇”にのめりこんでいきます。
このようにして、ルノワールは完全に私たちを現実味の無い、それでいて欲望がうずまいている世界に閉じ込めてしまいます。そこで観客が目撃するのは、次から次へと現れる色、色、色。衣装の色彩、建物の内装の色彩、そしてなんといっても日の光に照らされたなまめかしい人の顔の色。監督の甥でもある撮影監督クロード・ルノワールがフィルムに収めた色の繚乱に見とれながら、主人公であるカミーラを軸に、堅実な恋人、呑気な総督、情熱的な闘牛士らの三つ巴の恋の喜劇が進行します。ルノワールは傑作『ゲームの規則』で披露した恋の駆け引きのレトリックをここでも巧みに流用して私たちを楽しませてくれます。
ジャン・ルノワール。誰よりも人間を愛し、誰よりも生活環境や境遇が人の心情に影響を与えることを知り尽くした映像作家。他のフィルムと違って風景描写こそ本編には希薄ですが、豪華でありながら窮屈な宮殿、小さくても楽しい宿屋など、人が暮らしを営む空間にて住人がどのように迷走し、どのように幸福を感じるかという主張がこのフィルムでは強く打ち出されています。そしてその究極形はタイトルロールの「黄金の馬車」です。これは富と権力の象徴。そして自分勝手な欲望の象徴。だれもが皆これを欲し、だれもが皆これを得るために権謀術数のかぎりを尽くすのです。その象徴性たるや、まことに的を得て、この可笑しくも悲しいパロディをより理解しやすいものに仕立て上げるのに貢献しています。
人生劇場の罠にはまってしまった登場人物たち。はたしてカミーラは、そして彼女をとりまく紳士たちはこの罠から抜け出ることができるのか。終わりに近づき、こんな風に完全にキャラクターたちに素直に感情移入していることに気がつきました。素晴らしき人生のパロディ。これはあのフランソワ・トリュフォーが愛して止まなかったルノワール作品。あとは登場人物の運命を監督自ら下す采配に委ねるしか術がありません。
人生は芝居だね。
南米に新境地を見出そうと繰り出した落ち目のコメディア・デラルテの劇団の物語、という設定が秀逸だ。
三人の男の間で身動きが取れなくなってしまった主人公カミッラがたどり着いた結論――「自分は芝居の中でしか生きられない」――の悲しさ。
(以下ネタバレ注意!)
パンタロ-ネ「寂しいかい?」
コロンビーナ(カミッラ)「ええ、少し」
このラストのアンナ・マニャーニの表情。
人生は演劇なのか、演劇が人生なのか。いや、もうそんなことはどうでもいい。
何度見ても飽きない、奇跡の傑作!
