- [監督]小津安二郎
- [俳優]池部良
- [俳優]淡島千景
- [俳優]岸恵子
- [俳優]高橋貞二
- [俳優]笠智衆
- [俳優]山村聡
- [脚本]野田高梧
- カテゴリ:
- DVD (144分)
- 発売元:
- 松竹ホームビデオ (2007/12/22)
- 価格:
- ¥ 2,800 (税込)
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これも名作!
前作の「東京物語」でピークを極めた小津監督ではあるが、映画監督である以上は映画を作り続けなくてはならない。そして前作から約2年のブランクを経て本作である。本作では戦後急激に変わりつつある、若者の風俗を積極的に取り入れているところが新鮮。東京の蒲田駅から同じ時間の電車で出勤する若者たちがグループを作り、プライヴェートも行動を共にするが、既婚者の池部良と独身の岸恵子が「できちゃう」のでグループの結束に波紋が生ずる。もちろん池部の妻の淡島千景とも一波乱ある。しかも池部と岸が連れ込み宿に泊まり、キスまでするというドキドキのシークエンスまであるのです。
通勤グループと、池部の戦友会でのざわざわした感じはそれまでの小津作品には見られない、ちょっとした群像劇といった趣がある。したがって、いつもの小津作品に比べて、出演者が多い。これも新鮮。通勤グループのキーマンは後の「浮草」でも好演する田中春男(彼のにぎやかな大阪弁が実にいいですよね)。戦友会はもちろん加東大介(相変わらずなにをやってもウマイ!)。このように脇役に曲者を起用して、作品に絶妙のアクセントを加えるのも、小津監督は本当にうまいよね。
私の記憶が確かならば、小津作品にはこれだけにしか出ていない池部良がクールでやたらかっこいいし、その池部をいつも怒っている淡島千景が、立ち居振る舞いを含めてとても美しく撮られている。東野英治郎、杉村春子、山村聡、宮口精二や三井弘次なんかもさりげなく出てるし、そうそう、淡島の母親役の浦辺粂子がいい味出してます。ラストで池部が岡山に転勤したあとに、実家に帰っていた淡島が何日か遅れで、池部には黙って岡山についていくのが、絶妙の余韻を残す。これも名作。必見です。
倦怠期の夫婦の小さな危機と克服、戦後サラリーマン生活の原点を活写した名品
1956年の作品。丸ビルに満員電車で通うサラリーマン杉山(池辺良)と昌子(淡島千景)夫婦の物語。夫婦は子供を幼くして亡くし、倦怠期中。対話もおざなり。岸恵子演じる、金魚という仇名のOLが杉山を誘惑し、二人は関係を持つ。それに気づき、また夫が子供の命日を忘れたことに愛想をつかした昌子は家を出る。直後に杉山に転勤の話が舞い込み、同僚の死等を通じて出直しを決意した杉山は一人田舎に赴任する。昌子は杉山を追いかけてくるのかは観てのお楽しみ。
池辺良の寡黙ないい男ぶり、岸恵子の輝かしい美しさ・自由奔放さは強い印象を残すが、両者とも小津作品への出演は本作だけ。岸恵子の誘惑シーンや逢引の後の朝の宿の光景は小津作品では異色だ(不潔感はない)が、映画に溶け込ませる手腕が光る。他の俳優は典型的小津世界の体現者。淡島千景の立居振舞いは粋で絶品。夫婦の心が通うラストの対話は名場面。間違いはお互いに協力して小さいうちに片付けろ、と夫婦のあり方を説く会社の先輩役が笠智衆。脱サラしたバーのマスターを山村聡が演じ、客の東野英治郎がサラリーマン人生の悲哀を語る場面も心に残る。このように本作は今に通じる戦後サラリーマン生活の原点を描く。まだ周りに空き地が残る蒲田駅に多くの男女が向かう出勤場面は戦後日本のエネルギーの象徴だ。今は考えにくいが、同じ電車の通勤者が勤務先の枠を超えて仲間になる。一緒にハイキングをし、杉山の送別会で蛍の光を歌ういい人達だ。その中では、大阪弁の田中春男の持ち味が良い。杉山の戦友の加藤大介が酔っ払う場面は後年の「秋刀魚の味」を予告するかのよう。その他、杉村春子、浦辺粂子、中村伸郎、宮口精二が脇役で画面を締める。
このように、本作は、少し長時間だが、小津作品の常連と非常連の俳優を使いこなし、異色の場面を盛り込みながら、小津的夫婦の世界とサラリーマン社会の活写に成功した名品だ。
